長編 夜香花(やこうか) 完結

□第九話 宴
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この本丸初めての宴、開いて良かった
皆、本当に楽しそうで笑いが絶えない

あんなに飲み会が嫌いだった私も、実を言うと今は楽しい
きっと今までは、好きでもない人達との飲み会だったから苦痛だったんだと知る

今は、何故か腕相撲大会になってる皆を遠くから眺めてる
上半身裸で力み、真っ赤になった彼等を見て「男って幾つになっても中学生みたいだな……」とクスクス笑う

お茶を飲もうと湯飲みを持ち上げた時、蜂須賀が何かを言おうとした気がした
でも、ガヤガヤしてて聞こえない私は、湯飲みからクイっと中味を飲む

途端に焼け付く喉
コホコホと咳き込んだ私の背中をさすってくれる蜂須賀


蜂須賀「大丈夫かい?それはさっき誰かが置いて行ったお酒だよ」

主「コホコホ……」


あ……熱い……し、苦しい……

しばらく咳き込んだ私は、ぐったりしていた
それを介抱してくれる蜂須賀



お酒に弱い私は、ほんの少量だったにもかかわらず、徐々に眠くなっていく
しばらくすると、体をユラユラ揺らし、コクリと船を漕いでいた

そんな私を見かねてか、蜂須賀が優しく肩を抱いた
そして自分の方に私を寄せると、体を安定させてくれる

そのまま私は、眠りに誘われ
人前であるにもかかわらず、ぐっすり眠ってしまったのだった


***************


〜歌仙目線〜


ワイワイと騒がしい大広間
その一角で、ひっそりと一人お酒を飲む蜂須賀を見かけた
彼の膝には、何と主が……
僕は席を立ち二人の側へと移動した


歌仙「君が主に飲ませたのかい?」

蜂須賀「いいや、間違って飲んだようだよ」

歌仙「……………」


本当の話かどうか怪しいものだ
今、彼は、自分の膝の上にある主の頭を愛おしそうに撫でている
騒がしさに紛れて、この状況を作り出したんじゃないかと思った


歌仙「部屋へ連れて行くよ」

蜂須賀「………………」


そう言った瞬間、空気が変わった
今までとは違い、拒否の色が見える


蜂須賀「このままで大丈夫だ」

歌仙「駄目だ、元御世話係としては許可できない」


僕は、強制的に二人を引き剥がし、眠る主を腕に収めた
そして横抱きにして立ち上がる


蜂須賀「はぁ………君も、なのか?」

歌仙「………何がだい?」


そう言って、大広間を出て二階へと目指した
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