長編 輪菊(りんぎく) 完結
□第十九話 主の内番
2ページ/5ページ
数日後
本丸の庭は、騒がしかった
それは何故かと言うと……
全員「わぁぁぁ……!!」
宗三「す……素晴らしい!これはカタログにあった……」
主「そう、耕運機です!!」
いつか主にカタログを見せに来た宗三
その中にあった真っ赤なボディの耕運機を購入したのだった
主「この間、畑仕事を手伝って思ったのです。この広大な土地を鍬(くわ)ひとつで耕すのは大変だなと」
新品の耕運機の周りに集まった刀剣男士達
興味津々でいじり回している
主「さあ宗三、乗ってみて下さい!」
宗三「わ……私がですか?」
主「貴方が乗らなくて誰が乗るのです?早くしないと、鶴丸に壊されますよ」
ふと見ると、耕運機の座席に座った鶴丸
彼はオモチャを手に入れた子供のように、あちらこちらのレバーをガシャガシャといじり回していた
鶴丸「おや?こりゃどうやったら動くんだ?」
壊されては堪らないと思ったのか、慌てて耕運機に駆け寄る宗三
柔和な彼にしては珍しく、強引に鶴丸を運転席から引っ張り出すと、座席に座って周囲を見渡した
宗三「操作は分かっています。本を読みましたからね。では、皆さん離れて下さい」
皆の輪が広がったのを確認してからエンジンをかける
耕運機は、車体をブルンと震わせて騒音を立てた
主「危ないから離れなさい」
食い付くように見ていた短刀達を引っ張る
その事に気付きもしないくらい、皆、機械に釘付けだ
長谷部「さすが欲しがってただけの事はある。運転は完璧だ!」
主「ええ、そうですね。ふふ、何だか楽しそう!」
大声で話す集団から離れて、試運転をする宗三
普段、たおやかな雰囲気を醸し出している色気たっぷりな彼も、こうやって機械を操作する姿を見ると、男性なんだな……と、主は思った
そんな主の側で歌仙は、ブツブツと不満を漏らしていた
歌仙「現代遠征の費用に、機械の支払い………これじゃ近いうちに、資金が底を付くぞ」
蜂須賀「何かイベントでもあるといいのだけれど………」
主「……………」
それを聞き、何だかいたたまれない気分になった主
せっかく皆が貯めたお金を使ってるのは、自分な気がして来た
主「イ……イベントですね。調べておきます」
そそくさとこの場を退散する主
畑から離れ屋敷内に入ると、そのプレッシャーから解放されたようで、何だかホッとした