長編 夜香花(やこうか) 完結
□第八話 みんなの主
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〜青江目線〜
僕は、にっかり青江
あまり目立つ事が好きじゃない僕は、皆に比べると地味に暮らしている
割り振られた当番は、文句も言わずこなすし、粟田口の兄弟達と一緒に騒いだりしない
でも一度出陣すれば、しっかり仕事はこなす!!
にっかりとねっっ
っと、ひとり自慢はここまでにしておいて………
僕には、皆のような縁のある刀は居ない
だから基本独りぼっちだ
そんな僕を気にしてか、ある日、粟田口の脇差二人が僕の部屋に引っ越して来た
鯰尾「ひゃ〜青江の部屋、広ろっ!」
骨喰「ウチは、定員オーバーだからな」
う……うるさいね……
それでも少し嬉しかった
その日は、布団を横に並べて敷いた
三人で一斉に寝転がると、主の話になる
骨喰「主と何度くらい話した事ある?」
鯰尾「僕は、2、3回かな……」
青江「僕は、見かけただけだ」
骨喰「彼女は不思議な人だ……」
確かに何を考えているのか分からない
初めは出陣させてくれなくて困ったし、最近では愛染が怪我をして帰って来た時、着物が汚れるのも構わずに抱き付いていた
青江「僕らは替えのきく、ただの刀剣男士なのに、何故あんなに必死に守ろうとしてるんだろうね」
骨喰「家族だって言ってた」
鯰尾「家族?じゃあ、主はお母さんか?」
青江「お父さんは、長谷部かい?」
鯰尾「何で長谷部??」
骨喰「だって、主の事好きそうじゃないか?」
鯰尾「マジかーーーっ!!」
嬉しくてハシャぎ過ぎた
うるさいっ!と、隣りの部屋の和泉守に怒られる
僕達は、布団を被りクスクス笑い続けた
実は………皆には言わなかったけど、一度だけ主に話し掛けられた事がある
廊下で偶然すれ違った時に、主は僕を捕まえてこう言ったんだ
主「脇差の人数が少なくて、出陣する回数が多くてすいません。でも、いつも助かってますよ、ありがとう」
ポンポンと肩を叩いて去って行く主
僕は、地味だし目立たないと思っていたから声をかけられて驚いていた
彼女の触れた場所が、ふんわりと温かい気がした