長編 夜香花(やこうか) 完結
□第九話 宴
6ページ/6ページ
酔った主を抱いたまま廊下を歩く
部屋から出たせいで少し寒いのか、主が僕の胸にすり寄って来た
歌仙「……………」
二階へ上がり、部屋へ入る
そこには、長谷部が準備したであろう布団が目に入った
心臓がドキリと音を立てる
歌仙「…………何を馬鹿な事を」
よからぬ考えを振り払い、主を布団へと寝かせる
せめて帯だけでも外してやろうと手を回した時、彼女が僕の首に両腕を絡めた
主「ん……ん……」
ギュッと手繰り寄せられ、触れる頬と頬
僕は、ガマンする事も忘れ、思わず主を抱き締める
歌仙「…………主」
そう呼びかけ顔を見る
トロンとした目でこちらを見られ、理性が飛んだ
自分の唇を彼女に近付けようとしたその時、彼女から思わぬ言葉が漏れる
主「………ん………長谷部………」
ピタリと止まる体
こんな時に、他の男の名前を聞くなんて………
自分を取り戻した僕は、体を離し淡々と主の帯を外し彼女に布団を掛けた
歌仙「長谷部君には、そんな顔も見せるのかい?………僕とした事が……嫉妬なんてしてしまったよ」
そう言うと、大人しく寝ている主に顔を近付けた
そして露わになっている可愛いおでこにそっと口付けをすると、素早くここを出た
**************
翌日
猛烈な頭痛で目が覚める
長谷部「おはようございます……うぅ」
主「おはよう長谷部、貴方も二日酔いですか?」
ハシャぎ過ぎた代償が訪れる
何故か飲めないはずの私までもが、二日酔いになっていた
そこへ現れた、我が本丸の医療担当
スパーンと襖を開けると、ズカズカと入って来る
主「痛たたた………もう少し静かにお願いします、薬研」
薬研「ほら、二日酔いに効く薬湯持って来てやったぞ」
長谷部「随分、手際がいいな」
薬研「ま、予想通りだったからな」
そう言うと、二人分の湯飲みを置いて行った薬研
飲まなかった短刀と脇差以外、ほぼ全員ダウン状態だったみたいで、今から薬湯を配りに行くと言って去って行った
二日酔いは、もう二度とごめんだけど、楽しかったし、たまには宴もいいかな