長編 夜香花(やこうか) 完結

□第九話 宴
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酔った主を抱いたまま廊下を歩く
部屋から出たせいで少し寒いのか、主が僕の胸にすり寄って来た


歌仙「……………」


二階へ上がり、部屋へ入る
そこには、長谷部が準備したであろう布団が目に入った
心臓がドキリと音を立てる


歌仙「…………何を馬鹿な事を」


よからぬ考えを振り払い、主を布団へと寝かせる
せめて帯だけでも外してやろうと手を回した時、彼女が僕の首に両腕を絡めた


主「ん……ん……」


ギュッと手繰り寄せられ、触れる頬と頬

僕は、ガマンする事も忘れ、思わず主を抱き締める


歌仙「…………主」


そう呼びかけ顔を見る
トロンとした目でこちらを見られ、理性が飛んだ

自分の唇を彼女に近付けようとしたその時、彼女から思わぬ言葉が漏れる


主「………ん………長谷部………」


ピタリと止まる体
こんな時に、他の男の名前を聞くなんて………

自分を取り戻した僕は、体を離し淡々と主の帯を外し彼女に布団を掛けた


歌仙「長谷部君には、そんな顔も見せるのかい?………僕とした事が……嫉妬なんてしてしまったよ」


そう言うと、大人しく寝ている主に顔を近付けた
そして露わになっている可愛いおでこにそっと口付けをすると、素早くここを出た



**************


翌日

猛烈な頭痛で目が覚める


長谷部「おはようございます……うぅ」

主「おはよう長谷部、貴方も二日酔いですか?」


ハシャぎ過ぎた代償が訪れる
何故か飲めないはずの私までもが、二日酔いになっていた

そこへ現れた、我が本丸の医療担当
スパーンと襖を開けると、ズカズカと入って来る


主「痛たたた………もう少し静かにお願いします、薬研」

薬研「ほら、二日酔いに効く薬湯持って来てやったぞ」

長谷部「随分、手際がいいな」

薬研「ま、予想通りだったからな」


そう言うと、二人分の湯飲みを置いて行った薬研
飲まなかった短刀と脇差以外、ほぼ全員ダウン状態だったみたいで、今から薬湯を配りに行くと言って去って行った



二日酔いは、もう二度とごめんだけど、楽しかったし、たまには宴もいいかな


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