長編 輪菊(りんぎく) 完結

□第一話 余計な一言
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ここは本丸一階、大広間
今夜も新入り歓迎会と称した宴会が、今、始まろうとしている


長谷部「皆、静かに!主から大事な話がある!!」


主「(えぇっっ?!)」


た、た、確かに話はあるけど、わざわざそんな大袈裟に注目を集める事はない
だいぶ慣れてはきたけど、今でも大人数は苦手だ……



長谷部の一喝で、思い思いにお喋りしていた刀剣男士達が注目する
主は、諦めた様子で立ち上がった



主「皆さん、出陣、演練、内番お疲れ様です。ウチの本丸も軌道に乗り、貴方達のお陰で財政も潤ってきました。そこで、やっとですが、一人一人にお給料を差し上げたいと思います」

全員「うお〜!!」

長谷部「乾杯の後、名前を呼ばれた者から順に取りに来るように」


普段から賑やかな宴会が、より一層賑やかになる

長谷部は上座に座った者から順に、主の前まで呼び出した



主「三日月、いつもありがとう。少ないですが受け取って下さい」

三日月「あなや、給金が貰えるとは思わなかったぞ。有り難く受け取るとしよう……」



三日月は、ニコニコしながら自分の席に帰る
本丸でのOFFの彼は、本当にお爺ちゃんみたいに穏和
でも、これでも頼りになるウチの古株だ



主「鶯丸、何か欲しい物でも買って下さいね」

鶯丸「欲しい物?…………欲しい物はないが、大包平はまだかい?」

主「………………」



出た、大包平っっ

鶯丸は、二言目には「大包平」「大包平」と言う
しかし、いくら催促されても来ないものは来ない


主「ははは……すいません努力はしてるのですが」

鶯丸「この間の演練での、大包平は……」

短刀達「…………(また言ってる〜)」

主「つ、次は誰ですか?長谷部」

長谷部「次、鶴丸殿」


鶴丸「お!!俺か?!!」


名前を呼ばれ、ピュンとやって来たウチの問題児
その非の打ち所の無い美しい顔を、ワクワクと紅潮させながら目の前に座った



主「お疲れ様です。無駄遣いはしないように!!」

鶴丸「あれは必要経費だ」

主「鼻メガネがですか?」

鶴丸「ああ、そうだ!あれ一つで、どれだけ笑いが取れたか……そこでだ、主にお願いがある!!」


鶴丸からのお願い?
怖い……怖過ぎる……何言われるんだろ?


この鶴丸の一言がきっかけで、この後、本丸中を大騒ぎさせる事となる
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