長編 輪菊(りんぎく) 完結
□第四話 初 現代遠征
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今日は、初の『現代遠征』の日
珍しく早朝から起きている主は、準備に追われていた
主「え……と、出発は庭の池のほとり、到着地点は小さな神社の境内……支払いは、こんのすけが送ってくれた特殊なカード……あれ?カードが無い」
長谷部「昨日、携帯と一緒に文机に置いてましたが」
主「あ、あったあった」
長谷部「大丈夫ですか?しっかりして下さい」
どんな事でも『初めて』は、緊張するもの
今の主には、刀剣男士達が現世への移動時に受ける負担や、到着した後の彼等の様子など、全く想像がつかない
主「はぁ………本当に無事にあちらへ行けるのでしょうか……何か行きたくなくなってきました」
長谷部「今更、何を言ってるんですか?」
主「……………」
主は不安を隠しきれず、部屋から追い出そうとする長谷部の服を掴み、ジッと見上げた
長谷部は、そんな彼女を見て、ひとつため息を吐くとギュッと抱き締めてあげた
長谷部「俺だって行かせたくない……しかしこれは貴女が考えた、『刀剣男士の慰安旅行』なのでしょう?御手杵が楽しみに待ってます、頑張って行って来て下さい」
主「うん……ねえ、長谷部……キスして」
長谷部「クス……主命とあらば」
二人は軽く口付けを交わした
でも、これ以上くっ付いてると、本当に行きたくなくなってしまうと思った主は、すぐに長谷部から離れた
主「はぁ………では、参りますか」
長谷部「行ってらっしゃいませ」
主「あまり遅くなりませんから」
長谷部「はい、お早いお帰りをお待ちしてます」
本丸の庭にある池には、小さな橋がかかっている
三日月がいつも、鯉にエサを与えている場所だ
今剣「あるじさまが きました〜!!」
その池の周りには、人集りが出来ていた
そのガヤガヤと騒がしい集団に近付く
乱「おはよう主!今日のお洋服可愛い!!」
鶴丸「主、何で俺を連れてってくれないんだ。今からでも遅くない、一緒に驚きを探しに行こう!!」
羨ましがる皆の間を抜けて、たどり着いた橋の上
そこに、内番着のジャージ姿の御手杵が、緊張した面持ちで待っていた
御手杵「おはよう主。俺、この格好でいいのか?」
主「貴方の場合、戦闘着でもどっちでもいいのですが、その『へぼジャージ』がよく似合ってるので、それでいいんです」
御手杵「へ……へぼ……?」