長編 輪菊(りんぎく) 完結

□第五話 ただいま!
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主「ただいまぁぁぁ…………」

長谷部「主っ、いつお帰りになったのですか?!」


長谷部は自分の部屋で、書類整理をしていた
そこに突然現れた主
彼女は、襖を開けたかと思うと、文机の前に座る長谷部に突進してしがみ付いた


主「うぅ………………」

長谷部「現代遠征は、如何でしたか?」

主「………………」

長谷部「主?………主、主ーーーっ!!」


抱き付いて離れない彼女の顔を、自分の方に向けた
結構動かしているにもかかわらず、目を瞑ったままの主

そこへ偶然通りかかった薬研が、驚いた様子で駆け寄る


薬研「どうした?何があった!」

長谷部「わ……分からん……いきなり倒れたんだ」


それを聞いた薬研は、白衣のポケットから聴診器を出し自分の耳に挟む
そして、主が着ていた洋服の前ボタンを素早く外し始めた


白い肌が露わになり、見えて来た美しいレース
それが現代着の、下着だと知っていた長谷部は慌てて周囲を見回す
すると廊下には、長谷部の部屋の異変に気付いた者達が集まり、ワイワイと覗いていた


長谷部「すまないが皆、出て行ってくれ……」

大和守「どうしたの、何かあったの?」

加州「主、大丈夫?!!」

包丁「主の足、初めて見たぞ……白くてキレイだな〜」


長谷部「おい、見るなっっ出て行けっっ!!」


グイグイと押し寄せる皆を、力いっぱい押し返して、部屋から追い出した
後ろ手に閉めた襖の向こうでは、主を心配する話し声が聞こえる


長谷部「薬研、どうなんだ主は?どこか怪我でもしてるのか?」

薬研「いや…………」

長谷部「何だ?どうしたんだ?!!」






薬研「………………寝てる」





長谷部「寝てる…………だけ?」

薬研「ああ、寝てる『だけ』だ」


それを聞いて、ガックリうなだれた長谷部
てっきり、あちらの世界で何かが起きて、怪我でもしたのかと思っていた


薬研「相当疲れたんじゃねーのか?」

長谷部「負担が大きいのか?」

薬研「さぁな、部屋へ連れてって布団に寝かせてやれ」

長谷部「ああ……すまない薬研、ありがとう」


聴診器を首にかけ、部屋を出て行く薬研
廊下にたむろする、刀剣男士達に説明をしてくれている


長谷部「主………何事も無くて良かった」


長谷部は横たわる主の頭を、そっと撫でた
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