長編 輪菊(りんぎく) 完結
□第六話 短刀が……
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五虎退「……あ……あるじ様」
主「何です、五虎退?」
ぶらぶらと一人で本丸を歩いていた主
そこで、五虎退に引き止められた
それにニコリと微笑み、返事をする
ふわふわプラチナヘアーで、今日も可愛い五虎退
いつも引き連れて歩いている五頭の子虎も、可愛らしく主の足元に「抱っこ〜」とジャレついていた
主「ふふ、よしよし……」
五虎退「あ……あの……僕……旅に出たいんです」
主「……………………」
抱き上げた子虎を、ゆっくりと下ろした主
そして、何事もなかったようにクルリと踵を返し、もと来た廊下を歩く
五虎退「あ……あの……」
慌てて声を掛ける五虎退
気分を害したのかと思って、謝ろうとしていた
そんな五虎退に振り向きもせず、主はさっさと部屋へと戻ってしまった
数十分後
長谷部「主、ちょっとお話がありますっっ!!」
用事があるからと、一階へ降りていた長谷部
鼻息も荒く、主の部屋へと帰って来た
長谷部「何故、五虎退にあのような態度をとったのです?可哀相に、今も一期の膝で泣いてますよっっ!!」
主「いいえ長谷部……泣きたいのは私です」
長谷部「は?」
そう言われて長谷部は気付く、主の瞳に涙が溜まっている事を……
主「可愛い五虎退を旅に出すなど……心配で心配で、私には出来ませんっっ」
長谷部「ああ……主……」
主「それに五虎退が成長して『お兄さん』になるなんて……絶対に嫌っっ!!」
長谷部「さては、そっちが本音ですね?」
(↑冷たい目で見てる)
ふわふわしてる物や、可愛いものが大好きな主
小動物のような見た目で、小さな虎までくっ付いてる五虎退は、ある意味、主のお気に入りだった
その彼を何日も手放して、しかも帰って来た頃には、背も高くなり声も少し低くなる修行の旅に行かせたい訳はない
長谷部「では、五虎退に旅の許可を出して来ます」
主「いや〜〜〜っ」
その場を立ち去り、粟田口の部屋へ行こうとする長谷部を引っ張る
長谷部「………止めて下さい。ズボンが下がります」
主「ズボン脱がしたら行けなくなりますよね……」
長谷部「パンイチでも行きます」
主「うぅ……長谷部の人でなし〜〜〜っ!!」
長谷部「当たり前です、人ではありませんから」
根負けした主は、ズボンを放してうずくまって泣いた
(↑ウソ泣き)
そんな主を放っておいて、長谷部は粟田口の部屋へと降りて行った