長編 輪菊(りんぎく) 完結

□第十一話 秘めた想い
1ページ/5ページ

現代遠征の日
今回は、早い段階で薬研だと決まっていた
池の畔(ほとり)に来た彼は、内番着を着ている


薬研「白衣は脱いだ方がいいんだよな?」

主「はい、お願いします。しかし……」

薬研「何だ?」

主「こうして見ると、薬研は良い所のお坊ちゃまのようですね……」

薬研「……………」


上品な出で立ちだと言いたかった主
でも何故だか、少し機嫌の悪くなった薬研
主は、その理由に気付いていない


主「ところで………鶴丸。その格好は、どうしたのですか?」


見送りに集まっていた皆の視線が、主と薬研から鶴丸へと移った
彼は、この間買って貰った白をベースにした、カジュアルな現代服を着ている


鶴丸「何でもないぞ。俺はコレが気に入ってるだけだ!」


そう言って被った帽子の確度と前髪を気にしている鶴丸
その時全員が思っていた「今回もまたヤル気だな……」と


主「そうですか、では、そのまま行きなさい」

鶴丸「行く?」

主「山伏、山姥切!!」

山伏「カ、カ、カ、カ、承知した!」

山姥切「心得てる、任せろ」


そう言うと二人は、集団の中から颯爽と現れた!
そして、おもむろに鶴丸を両脇からガシッと抱え、無理やり裏山方面へ連れ去る
三人が消え去った裏山には、鶴丸の悲痛な叫び声と、山伏の「カ、カ、カ、カ!!」という高笑いが木霊していた


こんな事もあろうかと、国広兄弟(堀川抜き)に事前に話しておいた、主の勝ち


主「さて……では、参りましょうか」
(↑何事も無かったような笑顔)


気を取り直してそう言うと、薬研に手を差し伸べた
それを少し躊躇した後に、そっと握った薬研
その頬は、心なしか紅潮している


主「あちらへ着くまで、決して私から離れてはいけませんよ」

薬研「………ああ」


行くにあたっての注意事項を述べた主
しかし、目の前で自分を見上げてる薬研に戸惑ってしまう
何故なら、いつもとはまるで違う、何か熱い気持ちが伝わってくるような眼差しで見つめられていたからだ


主「コホン、では長谷部、後は頼みます」

長谷部「お気をつけて」


皆の見送りの声を背中で聞きながら、二人は池の中へと消えて行った
それを長谷部は、心配そうに見ていた
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ