長編 輪菊(りんぎく) 完結
□第十八話 本丸内のあれこれ
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現代遠征から帰って来た主は、すぐに倒れるような事は無かった
どうやら毎日の体力作りは、上手く行ってるようだった
二人を出迎えた歌仙と蜂須賀
主を中心に報告し合う中、長谷部は一人その場を離れた
廊下を歩き、行き着いた先は医務室
薬研「おう、帰って来たか?どうだった?二人きりの現代遠征は……」
長谷部「すまないが、ちょっと診てくれ」
薬研「?」
長谷部が差し出したのは、右手
薬研は、その手をあちこち触り状態を調べた
薬研「指が脱臼してるぞ、いったい何したんだ?」
長谷部「そうか……っ痛い!」
薬研「ちょっとガマンしろ……関節入れるから」
あちらの世界で警察から逃れる時に、指の異変に気がついた長谷部
池に飛び込む時に、主から手を握られそうになって、慌てて左手で彼女を抱き上げた
自分のせいでこんな事になったと、気にさせたく無かった長谷部は、平気な振りをしていたのだった
脱臼を戻す処置は、激痛を伴った
気を紛らわせる為に、現代遠征であった話をした長谷部
主の前の男と会った話をすると、薬研の動きがピクリと止まった
薬研「ソイツに会ったのか?」
長谷部「ああ、会った。その場で斬り捨ててやりたい気持ちだったが、主が困ると思い必死で自分を抑えた……」
薬研「俺ならガマン出来ねーな……」
コキッと関節を入れた瞬間、短く悲鳴を上げた長谷部
ちゃんと入ったかどうか、確かめる薬研
薬研「で?」
長谷部「斬る事は出来ないが、力いっぱい殴ってやった。主と同じか、それ以上に痛手を負わせてやったぞ」
薬研「………そうか」
一瞬、嬉しそうにニヤリと笑った薬研
主に代わって、仕返ししたい気持ちは一緒なんだと思った長谷部
長谷部「素手で痛めつけたのは初めてだったからこの様だ……人の体とは脆いな」
そう言う長谷部の右手に、固定の包帯を巻こうとした薬研
それを長谷部は、拒否した
長谷部「このままでいい……負傷した事を主に知れたくない」
薬研「何故だ?」
長谷部「気にしてるんだ……自分のせいでこんな事になったと」
薬研「ふ〜ん………愛されてるんだな」
不機嫌そうな声を出して、そう言った薬研
長谷部の手に湿布を貼ると、ピシャリと一度叩いた
長谷部「痛い、何をするっっ?!」
薬研「腫れるから湿布は貼らせてもらう。大将には、突き指したとでもいっておけ」
長谷部「あ…………ありがとう」