長編 輪菊(りんぎく) 完結

□第二十話 円満
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今日も主は一人だった

最近、主御世話係の長谷部は、人数の膨れ上がった本丸の運営に大忙し
内番の振り分け、新しく加わった現代遠征、皆の要望書の処理に財政と……
とても一人じゃはけきれない仕事を、歌仙と蜂須賀と協力してやる事になった

以前は客間として使われていた二階の部屋も、今では彼等に占領されて執務室となっている
主は暇潰しに、その部屋の襖をそっと開けて覗いてみた


主「………………」

長谷部「すみません、何かご用ですか?」


書類に目を通している長谷部が、立ち上がろうとした
それを慌てて止める


主「邪魔してすいません。何でもないので、そのまま……そのまま……」

長谷部「は……はい……」


こりゃ暇だなんて言える空気じゃない
主は閉めた襖の前でため息を吐くと、ぶらぶらと歩き始めた
そして、構ってくれる誰かを探して一階へ降りる


しかし………こんな時に限って、屋敷内には誰も居ない
きっと、この晴天を生かして、みんな内番に励んでいるに違いない


主「誰かヒマな人、居ないかなぁ………」


キョロキョロ見渡して見つけた、何者かの長い足
部屋から廊下に、半分出ている


主「誰?昼寝中??」


主は、そっと近付き部屋を覗いた
そこに居たのは、明石
獅子王から借りたのか、鵺を枕に寝ている
(↑鵺に嫌がる様子はない)
陽当たりが良い部屋なので、とても気持ちが良さそうだ



明石か………久し振りに見たな
コイツちゃんと働いてるのか?


一日の、そのほとんどを部屋で寝て過ごす明石
他の者のように、一生懸命汗だくで何かをやっている所を見た事がない

と、言うのも、実は要領の良い明石
仕事はさっさと済ませ、無駄の無い動きで一日を暮らしている
主は、たまたまその姿を、見た事が無いだけだった


しかし、よく寝てるな
あ、眼鏡……眼鏡かけたまま寝てる
フレームが顔に当たって痛そうだな


主は、そっと近付いた
そして眼鏡をゆっくり引き抜く


すると、主のその手をパシッと握った明石
グイッと引っ張り、主を抱き枕のように抱き締めた
そして再び動かなくなる………


ひゃぁぁぁ〜、どうしようっっ!!
出られないぃぃぃぃ〜っっ!!


蛍丸か愛染と間違えているのか?
もがけばもがく程、強くなる両腕
それを解こうと両足をバタつかせた時、明石から妙な悲鳴が上がる


明石「グホッ………い………痛っっ!!」


バタバタ動かした主の膝が、偶然ヒットした大切な場所
それに気付いた主は、慌ててこの場を逃げ去る


主「ご、ご、ごめんなさ〜いっっ!!」
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