長編 鈴蘭(すずらん)New!

□第二話 とある本丸
1ページ/5ページ

怪我をしている三日月を、巴に屋敷内に運んで貰った

入ってみて分かったが、この本丸は外観こそ日本家屋だが、内装はあちらの世界と変わらなかった


主「巴、そのソファーに三日月を寝かせて下さい」

巴「ここか?分かった」

主「鈴蘭さん、すぐに出陣出来る者を集めて下さい」


鈴蘭「何でぇ?」

主「何でって………」


主は言葉を無くした
どうやら彼女は、自分とかけ離れた考えを持っているようだ


主「手入れをする為の資源を、集めに行きます」

鈴蘭「資源?資源集めに行くの?やったぁ!また鍛刀出来るぅ!!」

主「いいえ、手入れが先です…………まさか、資源が枯渇してるのは、全て鍛刀に使ったからなのですか?」

鈴蘭「だってぇ………レアな刀、欲しいんだもん!」


悪びれもせずそう言った彼女
主は、唖然とした
何と言えば、この状況を分かってくれるだろう……と、考える

その時、三日月が痛そうな声を上げた


三日月「…………うっ」

主「すみません鈴蘭さん、今から勝手な事をします。後でちゃんと謝りますから」


そう前置きして、主は今居る部屋を出た
そして廊下を歩き、大声を出す


主「誰か居ませんか?居るならすぐに出て来てっっ!!」


何事かと顔を出した刀剣男士達、見知った者が次々に現れ始めた
その時、目の前に現れた彼………主の気持ちが混乱する



主「は……長谷部……」

長谷部「誰だ、お前は?」



いつも愛情たっぷりの眼差しで見つめてくれる長谷部
しかし今、目の前に居る彼は見知らぬ人物
分かってはいるのだけれど、冷たい視線を向けられ、胸の奥がチクリと痛む


主「私は、こんのすけから頼まれてここへ来ました。貴方達の仲間がケガをしています。お願いです、力を貸して下さい」

長谷部「……………」


顔だけ出していた男士達が、ぞろぞろ廊下へ出て来た
その姿に主は凍りついた

何故なら、ほとんどの者が、どこかしら傷を負っていたからだ




主「っっ!!」




驚きのあまり、言葉を失う主
その袖をツンツンと引っ張る感触がした


今剣「あなたは よそからきた あるじさまなの?」


ゆっくり今剣を見下ろす
彼の小さな肩には、刀で斬られたような傷痕が入っていた


主「い……今剣……短刀の貴方まで……」


あまりの痛々しさに、涙が出そうになる
しかし、泣いてる暇など無い
早急に資源を集めなければ、手入れが出来ない

主は下唇をグッと噛み、涙を堪えた
そして全員を屋敷の外に出すと、負傷の重症度により分ける
幸いな事に、重傷者はごく僅かだった

その中でも比較的、軽傷の者を、簡単な場所へ出陣、遠征させる
今はとにかく、ひとつでも資源が欲しい
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ