長編 鈴蘭(すずらん)New!

□第六話 弱点
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鈴蘭が、この本丸に一泊した
昨晩は、お供の亀甲が主の部屋へ忍び込もうとして失敗
結果、彼は、日本号の部屋で酒臭い男と一晩を過ごす事になった



長谷部「何だ、あの亀甲という男は?」

主「さ……さぁ……私も初めて会ったので分かりません」

長谷部「すぐに鈴蘭殿にお会いして、昨晩の話をしなければならないな。そして奴の処遇を……」
主「待って長谷部」


あんな夜中に、女性である主の部屋へ忍び込もうとした亀甲
自分の主が、しかも大切な恋人である彼女が、危険にさらされた事に怒りを隠せない長谷部

しかし意外にも主は、違う事を考えていたようで、話を遮られてしまった


主の考えでは、亀甲は鈴蘭に内緒で自分の本丸の事について何か話したいのだと言う
色々問題のある本丸の住人なので、昨日の事は見逃してやって欲しいとの事


長谷部「あり得ませんね……少し考えが甘いのではありませんか?」

主「そんな事はありません。勘ぐり過ぎです」

長谷部「まさか、あのような得体の知れない輩の、肩を持つのですか?」

主「ちょっと変わってますが、彼だって大切なお客様です。いくら長谷部でも、彼女達に失礼な言動は許しませんよ」

長谷部「………はぁ」


そうは言っても、長谷部の心配は増すばかり
これから先、主は、何度もあちらの本丸に行かなくてはならない


長谷部「主が、ご自分を女だと自覚して、ご自身を守ってもらわなければ困るのです。俺はもう、貴女のお側には居ないのですよ」

主「そんな事、言われなくても分かってますっ!!私だってこれくらい、一人で解決出来ます。だからもう私に、口煩くいちいち指図しないでちょうだいっっ!!」



長谷部「くっ…………」

主「あ………」



うっかり言ってしまった言葉
本当は、長谷部が居なくて不安で不安でいっぱいだった主
しかし、一人で頑張らなくてはと意地を張ってしまう
今言った言葉も、すぐに撤回しようとしたがやめてしまった



長谷部は一瞬、ショックな顔を見せた
しかし、眉間にシワを寄せ背を向ける
そして、何も言わずに部屋から出て行ってしまった



主「………はせ……べ」



引き止めようとした指先が空を掴んだ
酷い事を言ってしまった罪悪感が残り、胸が痛む

その時すぐに謝れば良かった
しかし、長谷部ならば、いつでも自分を許してくれるだろうと思っていた
それは恋人同士になった余裕や甘えからなのだが、その事を後から深く後悔する事となる
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