長編 鈴蘭(すずらん)New!

□第七話 刀解された者達
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主と巴は、鈴蘭の本丸へと向かっていた


巴「主、もっと俺に寄りかかれ」

主「うぅ……ありがとう、巴」


長時間、馬に揺られるのが苦手な主
まだ着いてもいないのに、既にお疲れのご様子


しかし巴は、こんな状況にも関わらず、密かに喜んでいた

これほど自分の体格が良かった事を有り難いと思った事はない
クタリと寄り添う主は、安定感が良いのか巴の胸にピッタリとくっ付いている

それがとても嬉しい

体調を気にするふりして、彼女を何度も見る
するとたまに、「大丈夫よ」と自分に微笑みかけてくれた

その笑顔は、平静を装おうとしている巴を、かなり苦しめる
気を張り詰め、馬の手綱を真剣に扱う振りでもしなければ、顔が綻んでしまいそうだった


そんな、主との二人きりの時間も束の間
蹄(ひづめ)をパカパカと鳴らし、暫く進んでいると、鈴蘭の本丸が見えて来た



この本丸は、相変わらず閑散としていた
庭には雑草が生え放題、客が来たにもかかわらず、誰一人として迎えに出て来ない
主と巴は馬から降りると、仕方なく玄関先へと向かった


巴「おい、誰か居らぬのかっ」


シン……と静まり返った本丸内に、声をかけた巴
やはり誰も出て来ない
呆れた巴が大きなため息を吐いた時、控え目な声が聞こえてきた


「………誰?」


薄暗い廊下から此方へやって来た脇差らしき刀剣男士
金髪に青い着物、快活そうな雰囲気を漂わせた彼は、主の前まで来ると自ら自己紹介をし始めた


浦島「俺は浦島虎徹!ヘイ!俺と竜宮城へ行ってみない?行き方わかんないけど!」

巴「………………」

主「……………ぷふっ」


まさかここで、こんな陽気な男士に出会えるとは思わなかった
暗い空気を吹き飛ばすほどの、楽しい自己紹介に思わず笑いが出る主


主「クスクス……私は、以前も来た審神者です。貴方は新しい仲間ですね?」

浦島「おう、俺、昨日この本丸に来たばっかりなんだ!」


キラキラと瞳を輝かせ、元気に受け答えしてくれる浦島………凄く可愛い
それだけで、この憂鬱でやりたくない仕事も頑張れる!そう主は思う


主「そうですか……貴方が浦島虎徹ですか……」

浦島「ん、どうかしたか?」
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