長編 野花(のばな) 完結
□第三話 明朝
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翌朝、日の出と共に目が覚め、何やら人の気配のする方へ足を運んでみた
燭台「やあ、おはよう!」
よく響く良い声で爽やかに挨拶して来た眼帯の男性
前田「おはようございます」
平野「おはようございます」
見事に揃って挨拶して来た可愛い男の子達
双子かな?
野花「おはようございます……何かお手伝いしましょうか?」
どうやらここは、厨(くりや)だったらしい
良い声の人がお米を研ぎ、双子(?)が火を起こしている
燭台「お気遣いありがとう、でも今日はいいよ。そうだ、外に行って来たらどうだい?畑に水やったり、手合わせしたり、すでにこの時間から内番業務に励んでるヤツも居るから、見て来るといいよ」
そう言うと慣れた手付きで、お釜を火にかけ、包丁で野菜を切っていた
私は、お言葉に甘えてこの場を去る
そして、皆さんが居る場所を探して、屋敷内を歩いてみた
太郎「………そなたは」
次郎「あら、アンタ!!昨日の舞姫じゃないのさっ!!」
野花「(ま、舞姫?!!)」
体の大きな二人に声をかけられる
昨晩は、まともにお話出来なかったから、ほぼ初対面だ
野花「あの……おはようございます」
太郎「良く眠れましたか?」
次郎「そんな事よりアンタ……辛い事があるなら私にお言い。昨日みたいに一人で泣くんじゃないよ。こっちが悲しくなるじゃないかい」
そう言うと長い腕で私を囲み、ギュッと抱き締めてくれた
いい匂いがする
野花「昨日は、すいませんでした。色々と混乱してまして……」
お姉さんみたいな人だな……と思った
こうやってると何だか安心する
って、あれ?この人
太郎「次郎、やめなさい」
次郎「いいじゃないのさっ。昨日までここには野郎しか居なかったんだ。こうやって癒されても罰は当たんない……」
野花「し、失礼しますっっ!!」
バッと次郎様の腕の中から飛び出て二人の前から走り去る私
あまりの美人さんでうっかり男の人だって事忘れていた
次郎「……逃げられた」
太郎「当たり前です」