長編 野花(のばな) 完結

□第九話 内番業務
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大和守「畑仕事すると田舎を思い出すよ」


最近では、私も内番業務に振り分けられ、今日は安定と畑仕事当番


野花「分かる、私も主の里が田舎だったから!!でも畑仕事嫌いじゃないな〜」


鍬(くわ)を動かす手を休めて汗を拭う
景趣は、夏
見上げた空には、大きな入道雲が見えた


大和守「それにしても暑いね……」

野花「大丈夫、今晩は涼しくなるよ」

大和守「何で分かるのさ」

野花「だって夕立が降るもん」


本当かな?と信じてない安定
でも私には自信があった

そこへ現れた非番の清光


加州「お〜い、冷えたスイカ持って来たよ〜!!」

大和守「気が利くじゃん!!」

野花「ふふ、きっと燭台切さんだよ」


案の定、暑さにやられないように心配した燭台切さんが、偶然通りかかった清光に持たせたらしい
流石は、うちの本丸のお母さん!!


大和守「うま〜い!!」

野花「渇いた喉が潤う〜!!」

加州「ホント美味しいねぇ、これ」

大和守「って、何で非番のお前が食べてるんだよ〜!!」


縁側に腰掛けスイカを食べる三人
今は、誰が一番遠くまで種を飛ばせるか競争してる所
こんな時私は、二人と兄弟になれたみたいで少し嬉しい



昼過ぎ……雲が空を覆って来た
夕方……ポツポツと降り出した雨は次第に大降りになり、日が沈む頃には、すっかり上がっていた


大和守「凄い、どうして分かったの?」

野花「雲見れば分かるの」

大和守「そうだったのか。じゃ疑ったお詫びにいいモノ見せてあげるよ」


そう言って彼は、夕げの後に私を外に連れ出した
初めて見る夜の本丸、それを後にして少し歩く
行き着いた先は、いつかタンポポが咲いていた小川のほとりだった


野花「ここが何?」

大和守「いいから黙って目を凝らしてみて」


何だか分からないけど、言われた通り暗闇をジッと見つめてみる
すると……今まで見えなかった青白い光が次々現れた


野花「………蛍」


それは次第に数を増やし、私達の周りをフワフワと漂い始める
余りの数に目が眩んだ私は、足元をふらつかせた


大和守「繋ごうか」


そう言って出された手
それを握ると、再び幻想的な光を見続ける
それは、この世の物とは思えない程美しかった
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