短編 花弁

□手袋の穴(薬研藤四郎)
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大将が、向こうの世界で怪我をして帰って来た
必死な形相で俺を二階へ連れて上がる長谷部
その様子から、大変な事態が起きてる事は想像がついた


俺達刀剣は、怪我をしても手入部屋へ行けば、よっぽどの怪我でない限りすぐに完治する
しかし人間である大将の怪我は、思ったようには治らなかった




俺は、医務室で薬を煎じていた
長期戦になりそうな大将の治療の為に、ありとあらゆる薬を作る
俺の名前の由来である薬研を見下ろしながら思い出す、いつかの彼女を……




主「薬研、貴方も兄弟達と遊んで来なさい」

薬研「そんな暇は無い。医学書を読まなきゃならないんだ」

主「お勉強も大事ですけど、遊びも同じくらい大切ですよ」


そう言って俺の手を握った大将
その手は、いち兄より遥かに小さく、驚く程にか細かった

こんな小さな手で、俺達、刀剣男士を纏め上げてるのか?と衝撃を受けた事を覚えてる




薬研「あの手を……守るんだ」




無意識に口にしていた言葉

大将は、いつも俺達を守ろうとしてくれていた
今は、俺が大将を助け、守る番だ
怪我を痛がる彼女の為に、鎮痛作用のある薬草をすり潰す


その時、想像してしまった
彼女がどんな仕打ちに合ったかを……
あんな酷い怪我負わせたヤツが憎い


薬研「許せねえ……会ってぶっ殺してやる」


思わず力が入る
手元の薬研がゴリゴリと音を立てた



***************



疲れきった長谷部を休ませる為に交代した日、大将は傷のせいで熱を出していた

そのせいで意識が朦朧として食事がとれないでいる
このまま、何日も栄養を摂取しないと衰弱してしまう

そんな病状の大将の為に、滋養強壮の効果のある薬湯を作った
しかし、それすら上手く飲み込めない



背に腹は代えられない
俺は、意を決して薬湯を口に含んだ
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