短編 花弁

□任せろ!!(厚藤四郎)
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薬研「厚っっ、危ない!!」


ちょっと気を抜いた隙を狙われた俺
背後から迫る時間朔行軍を、いち早く気付いてくれた薬研
素早くこっちに走り寄ると、力強く斬り捨てる
敵は目の前で、一瞬にしてチリになって消えた


厚「あ……ありがとよ」

薬研「ああ」


俺達兄弟の誰よりも早く修行に出た薬研
その強さは、群を抜いていた
俺は、そんな薬研の事が羨ましくて仕方がなかった



***************



そしてここは本丸内

俺は、いつも通り粟田口の皆と隠れんぼをして遊んでいる


薬研「厚か……遊ぶなら別の所でしてくれ」


薬研が管理している医務室
その前で立ち止まった俺に、声を掛けてきた


厚「何読んでんだ?」


文机に向かい本を読んでいる薬研
どうせ聞いてもわかんねーだろうな……
そうは思ったけど一応聞いてみる


薬研「医学書だ。大将の体調が悪くなった時の為に人間用のを読んでる」

厚「ふ〜ん……」


やっぱりわかんねー

俺に比べて、薬研は何でも出来る
器用だし頭もいいし、何より大人っぽい



他に行けと言われたにもかかわらず、医務室に足を踏み入れた
特に意味は無いが、薬研の側に座り兄弟をジッと見る

俺のその行動が鬱陶しかったのか、薬研が眉間にシワを寄せて振り返った


薬研「何か用なのか?何も無いなら出ていけ、気が散る」


そう邪険に言い放った時、部屋の前に人の気配がした




主「何を言い争っているのですか?」




それは、珍しく一人で本丸内を歩いている大将だった


厚「別に言い争ってなんていねーよ」

主「兄弟喧嘩はいけませんよ。いつも一期に言われているでしょう?」


そう言いながら医務室に入って来た大将
ゆっくりとした仕草で座ると、薬研の手元を覗き込んだ

この人が動くと、いい匂いがする



主「薬研、何を読んでいるのです?」

薬研「大将用の医学書だ」

主「それは有り難い事ですが、たまには兄弟達と一緒に遊びなさい」


そう言われた薬研は、少しムッとしたように見えた


大将は、薬研を俺達兄弟と同じ扱いをする
決して大人っぽいコイツを、大人として接したりしない
俺は、そんな大将が好きだ
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