長編 鈴蘭(すずらん)New!
□第五話 誘惑
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その時、二階の主の部屋では、鈴蘭のお供の亀甲がニコニコしていた
目の前に座る彼の心境が分からず、不審がる主
主「それで、皆に聞かれたくない話とは何ですか?」
きっと、あの本丸の話だろうと思った
あの悲惨な状況なら、不満も出るだろう
話を聞いて自分に出来る事なら、出来る限り手助けをしようと思っていた主
亀甲「ボクには秘密があるんだよ」
主「は?秘密??え……と……貴方個人の秘密、ですか??」
最初何の話だろうと思った
予想と違った出だしに、かなり驚く
しかし『秘密』とは不思議な言葉だ
それを聞くと何故だか続きを聞きたくなる
亀甲「ふふふふ………聞きたいかい?」
そう言うと、その美しい顔をニッコリ微笑ませた
この本丸に居ない亀甲に慣れない主は、その彼の不思議な空気に惑わされる
答えの代わりに、無意識にコクリと頷いていた主
その瞬間、亀甲が一歩づつ近付いて来た
主「ちょ……ちょっと待って下さい……何故、近付くのです?」
亀甲「だって聞きたいんだろう?」
主「や……やめて、それ以上近付かないで下さい」
亀甲「何でだい?ボクの秘密教えてあげるよ……ふふふふ」
ズリズリと座りながら後退した主は、トスンと背後に壁を感じた
これ以上下がれないと思った瞬間、亀甲が覆ってくる
そして静かに彼の美しい顔が自分に近付こうとした瞬間、主は顔をパッと背けた
亀甲「ふふふふ……可愛い耳をボクにさらけ出しているけど、いいのかい?」
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その時一階では、薬研が鈴蘭を診察していた
薬研「どこも異常は見当たらないが、どこが悪いんだ?」
乱「さっきは、気分が悪いって言ってたよね?」
薬研「気分……」
どこがどう悪いのかハッキリ言わない鈴蘭
あまり体調が悪そうには見えない
しかしながら、さっきから薬研は気になっている事がある
それは、鈴蘭の襟の広い服からチラリと見せている胸の谷間と、スカートからはみ出した太ももだ
どう見ても、強調して故意に見せてるようにしか思えない
薬研「待ってろ、今から気分の良くなる薬を煎じてくる」
薬研は無表情を保ったまま、自分に視線を送る鈴蘭を無視して立ち上がった
そして不機嫌そうな様子で、さっさと部屋を出て行く