長編 鈴蘭(すずらん)New!

□第六話 弱点
3ページ/5ページ

長谷部「あの、その、よろしければお召し物を先に着て頂けないでしょうか?」


目のやり場に困った長谷部が訴えかける
そんな彼を目の前に、鈴蘭は嬉しそうな声を上げた


鈴蘭「気になるぅ?」

長谷部「い、いや……」

鈴蘭「嬉しいなぁ、うちに居た長谷部って、全く私の裸に興奮してくれなかったんだモン」


普段から本丸内で、こんな姿を晒してるのか?と驚いた長谷部
しかも、興味があるにしろ無いにしろ、半裸の女性を目の前にして何も反応しない、そっちの長谷部が信じられないと思っていた


鈴蘭「ふふふ、真っ赤になってるぅ………可愛いぃ………」

長谷部「………っっ」


自分じゃ意識していなかった
血液が顔と耳に集中して、火を吹きそうなほど熱い


長谷部「あ、あの、一度退室します。その間にお洋服を……」
鈴蘭「待って、あ……」


立ち上がろうとした長谷部
その彼に、躓いて抱き付いた鈴蘭
長谷部の胸には、フニャリとした柔らかい感触があたる


長谷部「す、すみませんが、は……離れて下さい」

鈴蘭「クスクス………」


イタズラしてるかのように、楽しげに抱き付いている鈴蘭
困った長谷部は、あたふたと慌てふためく


その時、廊下の方からカダンと音がした
何の音だと、そちらに目を向け一瞬にして固まる




長谷部「………あ………主………」





ほんの少し開いていた襖の隙間
そこに見えたのは、この本丸の主である自分の恋人だった

この状況はマズいと、慌てて鈴蘭を突き放す
そして襖を開くと、そこには主の側で控える巴の姿もあった


主「………あの………えっと………失礼しました。朝餉にお誘いしようとして………その………」


ショックを隠せない主
話を続けようとしたのだが、それ以上言葉が出て来ずこの場を立ち去ってしまう


長谷部「待ってくれっっ!!誤解だ……」


走り去る主を追おうとした長谷部
しかし巴がそれを阻止する


巴「待たぬか、お前は鈴蘭殿の世話係だと聞いたが?」

長谷部「今は、それどころでは……」

巴「大切な主の客人だ、しっかりつとめよ。主の事は俺に任せろ……」


そう言うと、この場を去った巴
もう近侍ではない長谷部は、これ以上どうする事も出来なかった
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ