長編 鈴蘭(すずらん)New!

□第八話 彼等の気持ち
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二人は、何も無い殺風景な庭を眺めていた

先に話し出したのは三日月



三日月「審神者殿、大典太から話を聞いたのであろう?」

主「っっ」



まさか三日月本人から、その話をしてくるとは思わなかった
主は、何と言っていいのか分からずに黙り込んでしまう


三日月「驚いたか?しかし、審神者殿が思っているような酷い話ではないのだぞ」

主「え?それはどういう意味ですか」



三日月「俺達、刀剣男士は、主命には絶対に従う。何ゆえだと思う?」

主「主だから………ですか?」

三日月「それは勿論なのだが……」


横に並んで庭を見ていた三日月
その彼が、自分の方を見ている気がして、顔を彼の方に向けた



………きれい………




その時、見上げた三日月は、自分の本丸の三日月と同じ顔で微笑んでいた
そんな穏やかな表情で言った彼の言葉に、主の心が打たれる





三日月「己の主の事を、好いておるからだ」





主「…………………………」





主は知らず知らずのうちに、涙を流していた
彼等『刀剣男士』は、自分達『審神者』を好きだという事実に、嬉しさが込み上げてきて我慢が出来ない

ポロポロと流れる涙に、三日月が戸惑っているのが分かる



三日月「ど……どうかしたのか?」


主「す……すいません……泣いたりして……」




三日月「何ゆえ泣いておるのだ?」


主「……………嬉しいんです」




主は、心の底からそう思っていた
自分と刀剣男士達は、お互い想いあってる
それだけで、力が湧いた
彼等が命がけで自分に従うのならば、自分も命がけで彼等の想いに応えなくてはと思う


主「私、審神者として、もっと頑張りますね」


目に溜まった涙をゴシゴシ拭いた主
気持ちを入れ替える為に、ニッコリと三日月に微笑んで見せた


三日月「クスクス……先程まで泣いていたのに、もう笑っているのか?忙しい審神者だな」

主「はい、ここには仕事で来てますからね。泣いてなんかいられません。貴方達の為にも、この本丸を良くする為に頑張らなくては!!」


そう言って主は、両手でパンパンと自分の頬を叩いた
その逞しい姿を見て三日月は、再びクスクスと笑った
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