長編 鈴蘭(すずらん)New!

□第九話 急病
2ページ/5ページ

鈴蘭「ちょっと、さっきから言ってるでしょ?うちの三日月とイチャつかないで……あっっ!!」


ガチャン



仲の良さそうな主と三日月に、文句を言おうとした鈴蘭が、手元にあった飲み物を倒してしまう
その拍子に、中味が主の着物を濡らしてしまった



主「きゃ……」

巴「大丈夫か?」



慌てる主と巴
二人は持参していた手拭いで、零れた飲み物を拭いた



三日月「すまぬな、今、台拭きを持って来る」



鈴蘭の零した飲み物は、主の膝をグッショリと濡らしていた
ただでさえ帰りたいと思っていた主の気持ちが、更に急降下し文句の言葉も出て来ない
それを見て巴が、気遣いの言葉をこっそり耳元で囁いた



巴「(コソ)これを食べ終わったら、すぐに帰ろう」



その言葉に小さく頷いた主
そんな主に巴は、優しく微笑んだ




鈴蘭「……………………」





**************



散々だった食事も終わり、主と巴は帰り支度をしていた
その時気付いた………巴の様子がおかしい事に


主「どうしたのです?もしかしたら体調でも悪いのではありませんか?」

巴「いや、大丈夫だ………くっ………」

主「巴っっ!」


真っ青になり、冷や汗をかいている巴
両膝を地面に付いて、苦しそうに顔をしかめている


主「誰かっっ!誰か来てっっ!!」


すぐに駆け付けてくれたのは、先ほどの三池兄弟だった

彼らは体の大きな巴を、二人がかりで担ぎ上げ、本丸内へと入って行く
そこは誰も使っていない感じの空き部屋で、布団を敷いて巴を寝かせてくれた


主「すいませんが、ここには薬研は居ないのですか?」

大典太「………居ない」

主「では誰か、医療に詳しい者は……」

ソハヤ「そんな刀剣男士、居るのか?」


主は、泣きそうになった
頼りになる薬研は、ここにはに居ない

苦しそうな巴の手を握り、何度も「大丈夫、心配ない」と励ましてあげる主
何とかしてあげたいと、頭をフル回転させる
しかし、打つ手が見当たらない

そこへ入って来た鈴蘭
両手を体の前で組み、横柄な態度でこちらを見下ろしている
とても心配しているようには、見えない


鈴蘭「泊まっていけば?」

主「っっ」


その言葉で主は気付いた
もしやこれは、彼女の仕業か?……と
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ