長編 鈴蘭(すずらん)New!
□第九話 急病
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鈴蘭「ちょっと、さっきから言ってるでしょ?うちの三日月とイチャつかないで……あっっ!!」
ガチャン
仲の良さそうな主と三日月に、文句を言おうとした鈴蘭が、手元にあった飲み物を倒してしまう
その拍子に、中味が主の着物を濡らしてしまった
主「きゃ……」
巴「大丈夫か?」
慌てる主と巴
二人は持参していた手拭いで、零れた飲み物を拭いた
三日月「すまぬな、今、台拭きを持って来る」
鈴蘭の零した飲み物は、主の膝をグッショリと濡らしていた
ただでさえ帰りたいと思っていた主の気持ちが、更に急降下し文句の言葉も出て来ない
それを見て巴が、気遣いの言葉をこっそり耳元で囁いた
巴「(コソ)これを食べ終わったら、すぐに帰ろう」
その言葉に小さく頷いた主
そんな主に巴は、優しく微笑んだ
鈴蘭「……………………」
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散々だった食事も終わり、主と巴は帰り支度をしていた
その時気付いた………巴の様子がおかしい事に
主「どうしたのです?もしかしたら体調でも悪いのではありませんか?」
巴「いや、大丈夫だ………くっ………」
主「巴っっ!」
真っ青になり、冷や汗をかいている巴
両膝を地面に付いて、苦しそうに顔をしかめている
主「誰かっっ!誰か来てっっ!!」
すぐに駆け付けてくれたのは、先ほどの三池兄弟だった
彼らは体の大きな巴を、二人がかりで担ぎ上げ、本丸内へと入って行く
そこは誰も使っていない感じの空き部屋で、布団を敷いて巴を寝かせてくれた
主「すいませんが、ここには薬研は居ないのですか?」
大典太「………居ない」
主「では誰か、医療に詳しい者は……」
ソハヤ「そんな刀剣男士、居るのか?」
主は、泣きそうになった
頼りになる薬研は、ここにはに居ない
苦しそうな巴の手を握り、何度も「大丈夫、心配ない」と励ましてあげる主
何とかしてあげたいと、頭をフル回転させる
しかし、打つ手が見当たらない
そこへ入って来た鈴蘭
両手を体の前で組み、横柄な態度でこちらを見下ろしている
とても心配しているようには、見えない
鈴蘭「泊まっていけば?」
主「っっ」
その言葉で主は気付いた
もしやこれは、彼女の仕業か?……と