夢話
□you are HERO
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ねえ、翔太くん知ってる?
貴方はいつも早く逞しくなりたいって大人になりたいって言うけれど
ずっとずっと前から貴方は私の格好いいヒーローなんだよ?
ーーHEROーー
吐く息が白くなる朝
明日、島原総仕舞いでお祭りが開催されると聞いて私はワクワクしながら翔太くんが居る宿屋へ小走りしていた
おはようございます!と玄関先で挨拶すると、階段からひょっこり龍馬さんが顔を出した
坂本「おぉ、千姫呂か!おはようさん!」
龍馬さんは今日も元気じゃの、と私の頭を撫で二階に居る翔太くんに「嫁さんが来てるぞ〜」と囃し立てると、頭上からガタタ、っと大きな物音が聞こえた
千姫呂(嫁…)
ニヤニヤ楽しそうな龍馬さんをよそ目に私は顔を赤くして翔太くんを待つと
翔太「ゲホ…龍馬さん…やめてくださいよ…」
ゆっくりと顔を赤くした翔太くんが階段から降りてくる
まだ直してない寝癖と着崩れした着物姿
いつもしっかり者の翔太くんにしては珍しいなと思い目をパチパチしてると、翔太くんは恥ずかしそうに髪を手櫛で直した
翔太「ど、どうしたんだ?ゲホ」
千姫呂「あ、あのね、今度お祭りがあるって聞いて誘おうと思ったんだけど…それより風邪ひいたの?大丈夫?」
先程からしている咳がきになって、心配そうに見上げると翔太くんが答える前に龍馬さんが間に入った
龍馬「昨日から喉が痛いらしくての…大人しゅう寝かしちょるんやが、ちょこまかと動き回るんじゃ」
千姫呂「ええ!翔太くん大丈夫?お薬は?」
翔太「ちょ、ゲホッゲホ、龍馬さん…余計な事を言わないでくださいよ。千姫呂が心配するでしょう」
坂本「人の言う事を聞かない罰じゃき」
にひひ、と龍馬さんは笑った後、奥の部屋に手をヒラヒラさせながらすっこんだ
翔太「たくもう…あの人は…」
千姫呂「ふふ、翔太くんの事を凄い心配してるんだよ」
翔太「それは凄い伝わるんだけどな…ゲホッ」
翔太くんは少し嬉しそうに笑い、また咳をする
声もいつもと違くて弱々しい
翔太「それで、祭だっけ」
千姫呂「あ!いいのいいの!翔太くんは早く風邪を治して?」
最近外はめっきり寒くなってきたし、祭は夜だからな…と頭で諦めを付けて残念な心を隠す様にニッコリ笑うと翔太くんは少し寂しそうな顔をした
何か私にできる事があれば何でも言ってね!と言い残し宿を出ると後から追いかけてきた翔太くんに腕を掴まれた
千姫呂「どうしたの?」
翔太「えっと…」
翔太「風邪…ちゃんと治す」
千姫呂「うん」
俯く翔太くんの顔が赤い、つられて私の顔もきっと赤くなったんだろう
翔太「だから、祭、一緒に行こう。本当は俺からも誘おうと思ってたんだ」
目を合わせてはくれないけれど、嬉しい告白に私はこくりと頷いた
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