Innocent Dream (sea)

□一期
1ページ/1ページ

進路を変えた先は秋島で、ログを貯めるのに1週間程かかるというので、麦わらの一味には一番会う確率が高いだろう。
人目につかない場所に船を停め、上陸する。そして島全体の地形を掴むため、名無しさんは高台に行こうと歩み始めた。
高台にいく途中、賑やかな市場を通った。秋なだけあって、木の実や魚が豊富らしい。全体的に茶色や赤が目立っていた。町の人たちも穏やかで、まさに「秋島」という感じだ。
だが、名無しさんは警戒を解いてはいなかった。あらゆる島に上陸してきたから、それぞれの島には何かしら問題があったりするのだ。一番酷かったものでは、人身売買というところか。ここではそのようなことが行われていないことを名無しさんは心から願った。
人々の声に混じって、この雰囲気にそぐわない「声」が聞こえた。一番近いところでは路地裏に3人程いるチンピラ共が名無しさんの頭に正確に入ってきた。この「音」だけで見えていない物体を察知する技術も、ホクトから学んだものだ。複雑だが、十分役に立っているからまた腹立たしい。
話を戻して、チンピラ共の行動をまた音で感じ取る。警戒していると、そこに近づいている別の人物達がいた。女性一人と男一人、そして動物?みたいなものが楽しそうに会話をしながらそのチンピラ共に近づいていた。彼らはまだチンピラ共に気づいていないようだ。
「…え、まてよ」
名無しさんはその三人に妙な違和感を感じていた。感じたことのある波長、声、そして容姿。どれもが名無しさんの探していた者達と一致した。
「麦わらの…一味」
こんなに早く見つかるなんて思ってもいなかったので、人混みの中立ち止まってしまって、人にぶつかった。だが、そんなことも気にする余裕をもたせずに名無しさんの鼓動は早くなる。
「死ねる…」
呟くと、気づいた時にはもう足が動いていた。走ってはいなかったが、それでも足は早まるばかり。まずは彼らを助けなければ、とチンピラの処理に向かう。
やはり、チンピラ共はあのオレンジ髪の女性、もといナミの腕を掴み拘束した。そこに金髪の男性、サンジが先ほどとは打って変わり、鬼のような形相をしながらチンピラ共に蹴りかかろうとしていた。
「どいて」
そんなサンジをたしなめるように名無しさんがサンジの肩をぽん、と叩いた。
それに不意をつかれ一瞬サンジが動けなくなったのを見て、名無しさんは微笑みながら言った。
「僕に任せてよ。おにーさん」
「…っ!」
すると名無しさんは笑みをそのままにして、ナミを拘束しているチンピラ共にゆっくりと歩み寄った。

これが、名無しさんとサンジの最初のコンタクトとなる。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ