傍観者の干渉
□夕暮れの邂逅
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何時か、何処かの暗闇の中にその人は居た。
「酸化するこの世界の夢から、私を醒めさせてくれ。ねぇ……」
呟く声色はどこか不満そうであった。
「言いたい事は分かるが、だが賛同できるか否かで言えば否、だな。小生にとって、世界は酸化する物ではなく風化していく物だから。」
少年とも少女とも、男性とも女性とも取れる不思議な声。闇よりもその人は暗かった。
どうやら僅かに雨が降っているらしい。その所為からか姿が見えにくい。
しかし、雨は声を通す。
「親友の死を、友人の死を、指を加えて見ているだけしか出来なかった小生が言うのも……まぁ、実にちゃんちゃら可笑しい所ではあるが、小生がこうして存在する意味は……果たしてあるのだろうか?」
物寂しげな独白は誰に届く訳でもない。しかし、言葉にすれば誰かには届く。その人は言葉の恐ろしさを知る故に、自問をせざるを得ないのだ。
「生きている意味等、当に失せているのに……全く。死ねないのも困り物だな。」
その嘲笑は、誰に向けた物であるか。
唯、虚しく言葉は風に拐われた……。