短編

□私と〜の日常編D
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※本編より先に進んでます。ご了承下さい。

カーテンの隙間から漏れる朝日で目が覚めた私。隣りを見ると綺麗な顔した人は未だ熟睡中で起こさない様に腰に回された腕をそっと離し起き上がろうとしたけど再び布団の中に引き摺り込まれる。
「まだ早いでしょ?」
「ち、ちょっと。」抵抗してみるけどこの筋肉質の腕に敵わなくて結局諦めて隣りから聞こえる規則正しい寝息が子守唄の様に聞こえ、もう一度目を閉じた。少し眠ってしまいサイドテーブルにある時計で時間を確認すると見た瞬間慌てて起き上がる。
「よっちゃん。遅刻する。不味い。寝過ごした〜。」隣りに居る半分寝惚けた顔して起きるよっちゃん。
「よっちゃん、起きて。私、先に準備してくるからね。あ、痛っ。」慌て過ぎてベットから転げ落ちても急いで寝室から出て行った私。
「何、あれ。」寝室では私の行動を見て一人笑うよっちゃん。
今日は、ツアーの打合せで事務所に行く予定になっているけど予定の時間まであと1時間。急ピッチで身なりを整えリビングに戻ると未だ上半身裸で優雅に新聞を見ている一人の男。
「ちょっと、よっちゃん。新聞何て見てる時間何て無いって。打合せ遅れるって。」
「大丈夫、間に合うから。」新聞を閉じると立上り私に近付いて来るよっちゃん。すると、よっちゃんは私の唇に突然キスをした。
「セクハラするより、早く着替えてって。」
「はいはい。」そう言ったよっちゃんはリビングから出て行った。着替えるまでの間、私はリビングで待つ事にした。15分位経ってから着替えてメイクをしたよっちゃんがリビングに入って来た。
「遅いって。女性を何分待たせる気?」冗談で言うとコツンと頭を突かれ、
「痛いっ。」と、抗議してもバッチリメイクの方は笑うだけ。不貞腐れた顔をしていたら、再び不意打ちのキス。
「朝の充電。」
「そんなに何回も要らないでしょ。って、置いてかないでよ。」よっちゃんは車のキーを取り先に玄関へ向かう。その後を急いで追う私。玄関の鍵を閉め、いつもの様に車の助手席に乗込む。相変わらずマイケル・ジャクソンのCDを取り出し曲を流す。前は良くこの事に文句を言っていたよっちゃんも今は諦めたのか言わなくなった。何一つ変わって居ない、いつもの朝の光景。唯一変わったのは私の左手の薬指には結婚指輪。私は先月よっちゃんと結婚した。結婚して変わったのは苗字だけど2人だけの生活は今までと変わらなくて実感出来るのは、私の左手に嵌ってる指輪だけ。それに、よっちゃんと一緒に寝てるのも前から時々あったし。だけど大人の関係は実はまだ。それが少し引っ掛かってるけど、そんな事を口に出しては言えなくて。昔、よっちゃんが付き合ってきた人達は綺麗な女優さんとか歌手の人だから私みたいな平凡な体じゃ魅力無いのは重々承知してるけど私だってもう30越えてる訳だし良い大人なんだけどね。よっちゃんと結婚するきっかけとなったのが世界ツアーが始まった時で。ツアーが始まり最初は良かったよっちゃんの体の調子。それは最初の方の公演だけで途中から首の調子が悪くなり始め、手は痺れ強烈な痛みもあったけど、それでもツアーを続けると言うよっちゃんに私は体の方が大事だからと言って止めていたけど全然聞いて貰えなかった。そんな、辛い痛みを我慢して痛み止めの注射を何本も打ちそれでもステージに上がるよっちゃんを私は途中から苦しくて見ていられなくて、泣きながら止めたけどそれでも駄目だった。見ている事しか出来ない私の自分の力の無さに勝手に傷付いていた。偶々ツアーの予定で来ていたヨーロッパ。最終的には大喧嘩となり、私はホテルから荷物を持って飛び出したのは良いけどイギリスに来たのは初めてで右も左も分からない私は途方に暮れていたらアランさんの存在を思い出して連絡を取った。ホテルからアランさんの家は近くだったみたいで直ぐに来てくれたアランさん。家に連れて行って貰い前に聞いた内縁の奥さんにも会い泊まる様に言われ、ホテルに帰りたくない私はそのまま泊まる事にした。よっちゃんには、アランさんが連絡を入れたみたいで私から敢えてしなかった。アランさんに事情を話し、少し離れてみるのも良いと言われ私は2、3日泊まる事になった。頭の中では、よっちゃんの事が気になる癖に無理矢理気持ちを押し込み考え無い様にしていた。アランさんと奥さんとでロンドンの観光をしている時に私の携帯が鳴り、嫌な予感がしていた私は通話ボタンを押した。電話の相手はみっちゃんで内容がよっちゃんが緊急で手術をしないといけない所までになってて、よっちゃんはツアーを中断して緊急でLAに一人で先に戻ったと聞かされた。それを聞いた私は、「素直になりなさい。」とアランさんに言われ、直ぐにLA行きの飛行機に飛び乗った。空港から直で病院に行き、ベットに横になっているよっちゃんを見て号泣した。
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