短編

□私の日常編D
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「もしもし、リサさん。今、大丈夫?」
「ええ。大丈夫よ。」
「朝早くにゴメンね。」
「丁度、起きた所だから大丈夫よ。」
「今、よっちゃん出掛けてて今しか電話する時が無くって。」
「ヨシキさんに、聞かれたら不味い話しなの?」
「うん、まぁ。邪魔されたくないし。」私の返答に状況が予想出来るのかリサさんはクスッと笑う。
「リサさん、私と一緒に旅行行かない?」
「急にどうしたの?」
「やっぱり無理だよね?忙しいよね?」
「礼子。ちょっと待って。話しが見えないわ。」
「実はね・」私は、何故急にリサさんを旅行に誘ったのか経緯を事細かく説明した。話しを聞いたリサさんは喜んでくれた。
「凄いわね。初めて聞いたわ。応募で旅行が当たるなんて。一緒に行くのが私で良いの?」
「勿論だよ。リサさんと行きたいから誘ったんだよ。リサさんが良いの。ダメ?仕事だよね?」
「大丈夫よ。礼子と2人で旅行に行けるなら何とかするわ。私を誘ってくれて嬉しいわ。ありがとう。」
「当たったのは良いけど今じゃないとスケジュールが合わなくって。もうちょっと先になるとツアー始まるし、リサさんの都合も考えずゴメンなさい。」
「良いのよ。2人で旅行何て本当に嬉しいわ。ヨシキさんには話しは?」
「まだ。言ったらダメって言いそうだし。」
「そう。でも内緒には出来ないわよ。逆に後でバレた方が怖いと思うけど。それに黙って家を空ける何てしたらそれこそ大騒ぎになるのが目に見えてるわ。」
「うん。でも絶対行きたいの。実はね、パラオって死ぬまでに行きたい所だったんだよね〜。だから邪魔されたくないし。それで頑張って応募したんだけどね。」リサさんと会話をしている中、よっちゃんが家に戻って来て居たとは知らず、そのまま話し込んでいた。何処か抜けてる私はいつもの調子でリビングで話し込んで、戻って来たよっちゃんに聞かれている事も知らずに。リサさんとは、その後もお喋りをし詳しい事はまた連絡をすると言う事で電話を切った。携帯を切ると家事を再開しようとリビングのソファーから立上った。
「え?よ、よっちゃん?」
「ただいま。」
「お、お帰り。いつ帰ってたの?」
「今だけど。」
「そうなんだ。気が付かなかったよ。」(ビックリした〜。まさか聞かれて無いよね?今、戻ったって言ってるし。大丈夫だよね?絶対バレたくないんだよね。)
「俺が居ない間、変わった事無いよね?」
「何も無いよ。」
「そう。それなら良いけど。」私が見るからに至っていつもの調子のよっちゃんで聞かれていないと思い込み一人安心していた私。
「お腹空いたけど。」
「ああっ、うん。直ぐ用意するね。」(なるべく悟られない様に普段通りにしないと。よっちゃんの動物的直感は侮れないし。どうやって休みの話ししようかな〜。)もう私の頭の中は旅行の事で一杯だった。
1週間後、送られて来た旅行のチケット2枚。部屋のベットで一人チケットを眺めニヤける私。すると、突然部屋の扉が開く。
「礼子。これ洗濯して。」いつもの事ながらノックもせず部屋に入るよっちゃん。咄嗟に手にしていたチケットを隠し立上る。
「あっ、うん。分かった。」
「何?」慌てる私を不思議な顔で見るよっちゃん。(危ない。危ない。気を付けないと。)
「何でも無いよ。」
「そう。」
「よっちゃん、今日出掛ける予定?」
「特に無いけど。何で?」
「別に意味は無いけど。」
「作業場に居るから。」
「うん。分かった。」何も気が付いて居ないのか、よっちゃんは部屋から出て行きホッとしていた。リサさんに、旅行の予定日から決まったから連絡したいけど生憎日本は真夜中。逸る気持ちを抑えながら、日本が朝に変わるのを待っていた。今日のよっちゃんは何処にも行かず作業場に籠っているから特にする事も無く、近くのスーパーへ買い物に行く事に決め作業場に居るよっちゃんに一言声を掛け様と向かった。間抜けな私は旅行のチケットをベットの上に置いたままで。
作業場に向かい、中からはピアノの音色。そっと扉を開け、邪魔にならない様に音を立てずに中に入る。楽譜を見ながら弾いてるよっちゃん。その横顔を見ながら、手が止まるのを待っていた。(旅行の事、黙ってるのは心苦しいけどやっぱり旅行は女同士で行きたいし。言わなきゃ駄目だよね。どうやって説得しようかな〜。」
「礼子。」
「礼子。」
「ちょっと、礼子。」
「え?あっ。ゴメン。」
「さっきから何回も呼んでたけど。何?」
「ゴメン。ゴメン。買い物行こうと思って伝えに来たから。」
「そう。あんまり遅くならないでよ。」楽譜に視線を戻す、よっちゃん。
「分かってる。行ってくるね。」よっちゃんに告げると作業場から出て、財布を携帯を持ちスーパーを目指した。
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