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□鼓動の合図(警報)が鳴り響く
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 もしも世界があと三日で終わるとしたら、一体この地球で生きる人達はどうするのだろうか。

 きっと、そんなもしもなんてあるはずがないと、皆考えもしていないのだろう。

 だが、そんな人達の耳に、警報は鳴り響き聞こえてくる。
 それは、そんなもしもが現実に突きつけられた瞬間だった。



「朝よ、起きなさい」

「まだ寝むい……」

「何言ってんの。あと三日で世界は終わっても、学校はあるのよ」



 母に布団を剥ぎ取られ、渋々起きると制服に着替え、朝食を済ませると何時ものように学校へと向かう。

 こんな風に普通に学校へ向かっていると、昨日のニュースや警報が夢のように思えてしまう。



「夢、だったらよかったのに」



 昨日、突然臨時ニュースが流れると、夕飯を食べていた家族は口を開けたまま箸が止まっていた。

 漫画のような話だが、ニュースによると、地球に隕石が激突するというものだ。

 偉い人達も色々と考えたものの、その隕石に気づいたときにはすでに遅く、地球人全員が助かる方法はなく、ニュースではこう告げられた。



地球で生まれ地球で育った皆様。3日間を普通の生活のように過ごし、共に終わりの時を待ちましょう



 ニュースが終わると、皆何事もなかったかのように再び時が動き始めた。

 三日で地球は無くなるというその言葉は現実味がなく、皆普通に過ごすしかなかったのだ。



「あと二日で世界が終わるって、何だか現実味ないよね」

「てか、何で世界が終わるって時に学校あるんだよ」



 学校に着くと教室では、皆が口々に世界の終わりについて話していた。

 そんな中、自分の机に向かい鞄を置くと椅子に座り、机に突っ伏した。

 耳には皆の話し声が聞こえてくるが、やっぱり現実味がない。

 だがそんな中、鼓動を高鳴らせる声が耳に届いた。



「世界の終わりに昼寝かよ」



 顔を上げれば、そこにはいつの間にか登校してきていた、隣の席の辰馬(たつま)の姿があった。



「寝てませーん」

「何だ、寝てなかったか。お前のことだから、世界が滅んだとしても平気で飯食って寝てそうだよな」

「いやいや、世界が滅んだら私死んでるからご飯食べれないし寝れないよ? あ、永遠の眠りにはつくか」

「冗談になってねー」



 笑い合いながら話す辰馬との会話は、いつもと変わらない馬鹿馬鹿しい会話であり、ますます現実が遠ざかる。

 だが、この胸の高鳴りだけは、現実であることに気づかせる。

 小さい頃から仲がよかった辰馬は特別な存在であり、それは高校生となった今でも変わらない。



「おーい、皆席につけ」



 しばらくして先生がやって来ると、何時ものように授業が始まり、世界の終わりについて触れられることはなかった。


 そしてあっという間に一日の授業が終わると、辰馬と途中まで帰路を共にする。

 これも何時もと変わらない光景であり、今日一日で変わったことと言えば、生徒達や街を歩く人達が世界の終わりについて話していることくらいだ。



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