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□白い世界で生まれた二人
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何故自分が此処にいるのか。
どう自分が生まれたかなどわからない。
自分の名前すら知らず、周りは真っ白な世界。
そして、自分と同じ色白で、自分と同じ羽を背につけている人達がいる。
「あら？ 見かけない顔ね。もしかして、今生まれたばかりなのかしら。お仲間が一気に二人なんて初めてだわ！」
女がウキウキと話す中、色々と聞きたいことなどがあっても、言葉を上手く発することができない。
そんな自分を見て、生まれたばかりならまだ話せないわよねと女は笑みを浮かべる。
すると、生まれたばかりなら先ずは勉強よと言い連れていかれた場所には、一人の男と一人の女の姿があった。
男と目が合うと、何故か二人見詰め合っていた。
言葉もなくじっと見詰め合っていると、自分を連れてきた女は何処かへと行ってしまい、残った女が話だし、見詰め合っていた二人の視線が女へと向けられる。
女は自分達のことを話始め、自分達は天使と呼ばれるものだと言う。
そして、その天使になれる者はとても貴重であり、今回のように二人が天使として生まれてくることは珍しいことだと話していた。
どうやら、男と自分は今日生まれたばかりの天使のようだ。
「それじゃあ今日から二人には、私と一緒に立派な天使になるための勉強をしていくわよ」
こうして始まった天使の勉強会だったが、日にちが経つにつれ、二人は普通に会話ができるまでに成長していった。
天使の勉強で教わるのは、天使の仕事だ。
天使は人を監視し、天国に逝く人を導く案内人をするのだ。
ただそれだけの簡単な仕事に思えるかもしれないが、天使は人が生まれてから死ぬまでの間を、水鏡に映し監視し続けなければならない。
いくら天使は死なないといっても、人の一生を監視するのは気が遠くなるような仕事だ。
「それじゃあ、今日のお勉強はここまでよ。このあとは、水鏡が使えるようになる特訓を続けてちょうだいね」
天使に睡眠などはなく、生まれてからは勉強、特訓の繰り返しだ。
授業が終わり、あとは各自で水鏡の練習をするだけなのだが、一度も話したことのない男のことが何故かずっと気になっていた。
「ねえ、水鏡ってできるようになった？」
「まだ」
さりげなく話しかけてみると、そっけない返事が返ってくる。
天使は、人の監視と天国への案内をするだけのため、愛想などは関係ないが、男は周りの天使達と明らかに何かが違っていた。
女と男がまだ天使のたまごだからという訳ではなく、何かが違うのだ。
だが、その違っているものの正体はわからない。
「よかったら、一緒に練習しない？」
「別にいいけど」
気づくと、女は男に声をかけていた。
お互いに水鏡を用意すると、瞼を閉じ念じる。
水鏡は、器のような物に水を入れ念じると、自分がこれから一生を見続ける相手が水に映るというものだ。
今二人が使っている水鏡は練習用のため、人間世界が映し出されれば、その時点ではれて天使になれる。
そうなれば、本当の水鏡を貰うことができ、ようやく天使としての仕事がスタートする。
だが、何度試しても水鏡に映る気配はなく、二人ともなかなか上手くいかない。