短編集
□戦国ライフはいかが?
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麻千は武将が大好きなのだが、アニメやゲームでのキャラに恋をするだけであり、歴史は無知だった。
そんな麻千が戦国時代に突然放り込まれたとしたら、生きていけるはずがない。
はずなのだが、何故か麻千は姫となっていた。
「何で私こんなことになってんのよ。早く元の時代に帰りたいよ」
「何を一人でお話になっておられるのですか。今日は姫様を尋ねに信長様がお城に来られるのですから、もっと身なりをしっかりと──」
「信長って、あの織田 信長!?」
突然戦国時代に放り込まれた麻千は、どうやらその国の姫とそっくりらしく、間違って連れてこられたがために今の現状となっていた。
何を説明しても信じてもらえないどころか、外にすら出られない毎日にうんざりとしていた時、自分の知っている武将、織田信長の名が出され一気に麻千のテンションは上がる。
「姫様、いくら親しいからと、様をお付けにならないのはいけません。織田 信長様とお呼びくださいませ。聞いておられるのですか姫様」
麻千は世話係の言葉など一切聞かず、信長の事で頭を膨らます。
武将のゲームでは、髭を生やしたおじさん。
乙女ゲーなら、イケメンな武将の一人である信長だが、一体どちらが現れるのだろうかと期待に胸を膨らませていると、外から騒がしい声が聞こえてきた。
「姫様、信長様がお着きになられましたよ」
「信長!」
「姫様!?」
麻千は部屋を飛び出すと、信長の元へと向かう。
動きづらい着物はこの数日だけでは慣れず、自然と歩く幅が狭くなる。
「もう、早く信長を見たいのに、ッわ!」
無理矢理走ろうとしたせいで、麻千は着物に足を取られ、そのまま前へと体が傾く。
倒れると思ったその時、横から現れた何かに体が抱き止められ、麻千はなんとか転ばずにすむ。
「すみませ……」
言いかけたところで、麻千は言葉を失った。
麻千の瞳に映るのは、とても綺麗でいて、少し冷たさを感じるような男性だったからだ。
男性を綺麗なんて思ったのはこの時が初めてであり、麻千の瞳はその男性から剃らせなくなる。
「大丈夫か?」
「っ!!は、はい!お陰様で」
麻千は体をそっと放すと、ありがとうございましたと頭を下げお礼を伝える。
「何をそんなに急いでいたんだ?」
「あっ!!信長!!すみません、私ある方を探している最中なので、これで失礼致します」
麻千は転ばないように注意しながら早足で城の入り口へと向かうが、そこにはすでに信長の姿はない。
麻千がため息をつき肩を落としていると、姫様と呼ぶ声が聞こえ、世話係が追いかけてきたのだろうかと恐る恐る振り返る。
すると、そこにいたのは見慣れない男性であり、先程合った男性と同じくらいに綺麗な人だった。
「お久し振りです、姫様」
「えーっと……」
姫様と呼ぶこの人物が何者なのかわからず困っていると、男は、忘れてしまわれたのですかと悲しそうな表情を浮かべる。
「無理もないですね。こうして会うのはいつぶりかもわかりませんし」
どうやら、姫とこの男性は親しい間柄のようだ。
一体何者なのだろうかと、麻千は男性に尋ねる。
「僕は森 蘭丸です。姫様とは3回ほどしかお会いしたことはありませんから、覚えていないのも無理はないです」
「えーッ!?蘭丸って、あの森 蘭丸!?」
声を上げ驚く麻千に、蘭丸の方が驚きクスリと笑みを溢す。
「そんなに僕、変わりましたか?」
「いや、変わったというより初対面だし……」
「初対面?」
首を傾げる蘭丸に、自分は姫でないことや、別の世界から来たことを話すが、姫と瓜二つ麻千が何を言ったところで信じてはもらえず、蘭丸は笑うだけだ。
必死に説明するも虚しく、麻千と蘭丸は二人広間へと向かう。