短編集

□戦国ライフはいかが?
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「姫様、何処へ行っておられたのですか!!信長様はすでにお待ちですよ!!っ、蘭丸様もご一緒でしたか。ささ、どうぞお入りくださいませ」



麻千の世話係が二人を広間へと通すと、そこにいたのは、先程麻千が転びそうになったのを助けてくれた人物だった。

その男性の視線が麻千へと向けると、麻千は慌てて畳の上に座る。



「信長様、遅れてしまい申し訳ありませんでした」



頭を下げる蘭丸に、構わんと一言言い放つこの男性こそ、麻千が探していた信長だったのだと知る。

こうして、蘭丸と信長が並ぶと綺麗すぎて直視できない麻千は、顔を俯かせてしまう。



「先程から俯いているようだが、どうかしたのか?」

「麻千様は緊張しておられるのでしょう。未来の夫となられる信長様を前にしておられるのですから」

「そうなんです!未来の夫となる信長様…………!!夫!?」



まさかの言葉に一瞬、麻千の思考がフリーズしてしまったが、夫というのは夫婦になることであり、その麻千の夫となる男が信長ということなのかと頭が混乱してしまう。

だが、その信長と夫婦になるのは本当の姫なのだと頭の中で結論が出ると、麻千は納得する。



「ッ……!?」



折角頭の中が整理されたというのに、いつの間にか目の前まで近づいていた信長が麻千の顎を掴むと持ち上げた。

近い距離に頬に熱が宿ると、ほとんど麻千は混乱状態となる。

だが、そんな麻千の耳に、信長の声が届いた。



「お前、本当にあの姫か?」

「ッ……!」



真っ直ぐに麻千を見つめる瞳には、さっき見た時のような冷たさはなく、まるで興味津々といった子供のように瞳の奥を輝かせている。

もしかしたら、この人なら麻千の話を信じてくれるかもしれないと思った麻千が口を開こうとすると、蘭丸の声が麻千の言葉を遮る。



「何を言っておられるのですか。祝言をあげたくないからとそのようなことを……」

「勝手に決められた者となど、俺は最初から認めてはおらん。それも、このようなつまらぬ姫などと」



本人がいる前だというのに、二人は何やら言い合いを始めてしまった。

二人の会話を聞く限り、どうやら信長は勝手に決められた相手、つまりはこの国の姫と結婚をさせられるようだ。

だが信長は、その結婚を認めていないらしく、今も嫌がっているようだ。

自分の事ではないとはいえ、今は麻千が姫であり、目の前でこんな言い合いをされて腹が立たないわけがない。



「ッ!!なんなんですか、本人がいる前で!!私だってこんな結婚お断りです!!」



怒りに立ち上がり、思ったことを口に出した後にハッとする麻千だが、すでに手遅れだ。

麻千は再びその場に座り込むと、顔を伏せてしまう。



「フッ……最初は退屈な女だと思っていたが、どうやらそうでもなさそうだな」


何てことを言ってしまったのだろうかと自分を責める麻千だが、そんな麻千の耳に届いた言葉に目を丸くする。

信長の口許には笑みが浮かんでおり、どうやら麻千は信長の興味を惹いたようだ。



「これから俺と共に城へ来い」

「…………え?」



何がどうなったのかわからないまま、蘭丸は部屋を出ていくと馬の用意をし、麻千はその馬に信長と乗せられると、馬は走り出す。



「え!?ちょ、どうなってんのよこれーッ!!」



そして着いた先は、麻千の城よりも大きな城だ。

あれよあれよというまに連れてこられたこの城こそ、信長の城だ。

城に着いた後は、信長は何処かへと行ってしまい、麻千は蘭丸に案内され、これから麻千が使うことになる部屋へと案内された。



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