短編集

□目覚めるとそこは
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目を覚ますとそこには、青空があった。

どうやら自分は倒れているらしく、上体を起こすと、##NAME1##はキョロキョロと辺りを見回す。



「なんで森の中なんかに……」



自分の状況が全くわからない##NAME1##は、記憶を巻き戻していく。



「えっと、田舎のおばあちゃんの家に遊びに来てて、それで——」



思い出していたその時、突然何かが近づいてくる音が聞こえてくると、鳴き声を響かせ馬が飛び出してきた。

驚きで叫び声を上げそうになると、落ち着け、と強い口調で声が聞こえる。
すると、一人の男が暴れる馬の背に乗り手綱を引く。

馬は次第に落ち着きを取り戻すと、ようやくその場で落ち着いた。



「驚かせてすまなかったな」

「いえ」



よく見ると、男は着物姿であり、どこかでお祭りでもあるのだろうかと思ったが、それよりも、この人に聞けばここがどこかわかるかもしれないと思い、##NAME1##は立ち上がると口を開いた。



「あの、ここはどこでしょうか?」

「なんだ、お主迷子なのか?」

「はい。おばあちゃんの家に遊びに来てて、気づいたらここに」

「なんとも奇妙な話だな」



男は顎に手をおき、不思議そうに##NAME1##を見ると、驚かせてしまった礼にと、##NAME1##を元来た場所まで送ろうと言い出した。

流石に悪い気もしたが、このまま一人では帰れる気がせず、お言葉に甘えて送ってもらうことにした。



「では、参るとしよう」



男は馬と共に歩き始め、その後を##NAME1##もついていく。

男の背を見つめ、その大きな背に、先程の馬を静止をするときのあの言葉の迫力を思い出す。
あの迫力に、声を上げかけていた##NAME1##まで言葉を失ったのだ。



「お主、名はなんと申すのだ?」

「な、##NAME1## ##NAME2##です!」



突然の言葉に慌てて答えると、良い名だなと男は言う。

本当は、自分の名は嫌いでしょうがなかった。
古くさい名前で、小さい頃は名前のことでからかわれることもあったくらいだ。

だが、こんな風に自分の名を褒められたのは初めてで、つい嬉しくなり口許が緩む。



「ようやく森を抜けたな。あと少し歩けば村が見えてくる」

「ありがとうございます。あとは一人で大丈夫ですので」

「いや、お主を送ると言った我の言葉に二言はない。それにだ、我も戻る途中だからな」



そう言うと、再び歩き出してしまう男の後を着いていく。
そして、目的の町が見えてくると、##NAME1##は言葉を失った。
周りの店は、着物や簪などが売られているお店ばかり。



「ここは……」

「ここは私の国、甲斐の町だ」

「甲斐?国って、え?」



訳がわからず混乱していると、男は##NAME1##の顔を覗き込む。
突然の事に、顔を真っ赤に染める離れそうとするが、地面に足をとられ滑ってしまう。

転んでしまうのを覚悟したその時、伸ばされた逞しい腕が腰を支え、なんとか転ばずにすんだ。

だが、安堵したのも束の間。
先程よりも近くなってしまった男との距離に、鼓動が大きく高鳴った。



「っす、すみません!!」

「気にするな。それよりも、町を目の前にしてから様子が可笑しいようだが、どうかしたのか?」

「あの、えっと……」



なんと説明すればいいのかわからず、その先の言葉が出ないまま顔を伏せてしまうと、突然男が手を叩いた。



「お腹が空いたであろう。団子屋にでも寄るとしよう」

「あの、でも私、お金が……」

「気にするでない。我がご馳走しよう」



どうしたものかと考える##NAME1##のことなどお構い無く、男は##NAME1##の腕を掴むと町に急ぎ、近くの茶屋へと向かう。

茶屋に着くと、店の外に置かれた長椅子に座る。
そのあと直ぐに、お団子の乗った皿とお茶が二人の間に置かれた。



「うむ、美味い!!遠慮はいらん。お主も食べてみよ」

「は、はぁ……」



お団子を食べるような気分ではなかったが、折角の行為を無下にもできず、##NAME1##はお団子の刺さった串を一本手で摘まむと、一番上のお団子をパクリと食べた。



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