短編集

□シンデレラ物語
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 とある村に、家族と仲良く暮らす少女がいました。
 ですが、ある日流行り病で両親を亡くしてしまった少女は、親戚の家に引き取られたのです。

 それから数年経ち、親戚の人も亡くなってしまった家に残されたのは、成長し女性になったシレラとその家の3人の姉達。

 そこからの日々はとても酷いものでした。
 姉達は掃除を全てシレラにやらせたりと意地悪をします。

 何度片付けても姉達に桶をひっくり返されまた掃除。
 そんなシレラの服はボロボロに薄汚れ、手はガサガサ。

 ですが、姉達に逆らうことはできませんでした。

 なぜなら、両親が亡くなったあと引き取ってくれた親戚夫婦は、とても優しくしてくれたからです。

 姉達には意地悪をされるものの、住む場所があるだけで幸せなことでした。


 それから月日は流れ、ある日お城から招待状が届きました。
 なんでも、王子様の妃を探すため舞踏会が開かれるとのこと。

 姉達は舞踏会へ行くのを楽しみに上機嫌でしたが、勿論シレラはお留守番。
 でも、それでいいのです。
 ボロボロの洋服にガサガサな手、こんな姿で舞踏会になど行けるはずがないのですから。


 そして舞踏会当日。
 3人の姉は舞踏会へと行ってしまい、一人残ったシレラは掃除をしまいました。

 今頃姉達は、お城に着いた頃。
 せめて洋服だけでもキレイなものがあればなんて、贅沢な考えが頭を過ります。

 まだ両親が生きていた頃、贅沢な暮らしではなかったものの、三人で幸せに暮らしていました。
 なのに、今のシレラはまるで召使のよう。

 自然と涙が頬を伝ったとき、どこからか声が聞こえてきたのです。



「キミも舞踏会に行きたいんじゃない?」



 目の前に現れたのは、羽をつけ飛ぶ、小さな妖精の姿。

 驚くシレラに妖精は「もしキミが望むなら、舞踏会に連れて行ってあげるよ」と言う。

 妖精の言葉に喜んだシレラだったが、その表情は暗くなり、無理よと一言。

 何故無理なのか尋ねる妖精に「こんなボロボロの服じゃいけないもの」と悲しげな表情を浮かべるシレラ。



「僕が聞きたいのは、キミが舞踏会に行きたいのかどうかだよ。キミはどうしたいんだい?」

「私は……勿論行きたいわ」



 その言葉を聞いた妖精が笑みを浮かべると、パッと宙に杖が現れ、妖精は杖を握るとその腕を振る。

 すると突然、シレラのボロボロだった洋服や靴はキレイなドレスとガラスの靴に変わり、髪型までもがキレイに仕上げられた。



「これは、いつも頑張っているキミへの僕からのプレゼントだよ」



 気持ちは嬉しいが、今からではとても舞踏会には間に合わない。
 妖精は、落ち込むシレラを外へと連れ出し再び杖を振ると、何もない場所からかぼちゃの馬車を出した。

 シレラはその馬車に乗り、なんとか無事にお城へついたのだが、中に入れず立ち止まっていた。
 こんなキレイなドレスに靴、それに髪型が、自分に似合っているのだろうかと不安になり足が動かない。



「中には入られないのですか?」



 突然声をかけられ伏せてしまっていた顔を上げると、少し怖そうな見た目の男性の姿がある。

 お城の前で立ちつくしていたから怪しまれてしまったのだろうかと思っていると「舞踏会に来られたのでは」と尋ねられ小さく頷く。

 苦笑いを浮かべながら、自分がこんな場所に来た事自体が場違いだったんですと言うと、男性は「そんなことありません。貴女はとても美しいですよ」と言われ、シレラの顔は熱を持つ。
 今までそんなことを言われた事がなく、色づく頬を隠すように両手で触れる。

 すると目の前に手が差し伸べられ「城の中へ行きましょう」と言われたシレラは自分の手を重ね、二人お城の中へと入る。
 中には沢山の女性が集められており、みんな王子に選ばれようと気合十分だ。



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