乃木坂

□旅館
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「凄いなぁー!」

目をキラキラとさせ部屋の中を探索したり窓から外の景色を眺める

「まいやん!見て!露天風呂あんで!」

「うんうん。そうだね。」

湯船に手をぱちゃぱちゃさせながら嬉しそうにはしゃぐ七瀬に麻衣は緩む頬を抑えきれていない

「ななせー。そで濡れちゃうからこっちおいで」

「はーい」

手をピシッとあげとてとてと駆け寄ってくる七瀬の頭をよしよしと撫でる

「先に荷物ほどくよー」

「はーい」

ある程度の荷解きを終わらせた七瀬はテレビをつけたり、壁にかかる掛け軸を眺めたりとつまらなそうにしている

「七瀬。時間あるしそこら辺見て回る?」

「いいん!?行きたいっ」

「いいよ。」

嬉しそうにやったーっと呟きながらいそいそと用意を始める

「財布と携帯...があればええかな?」

「いいんじゃない?」

「ほないこ!!」

靴を履きはやくはやくと見つめてくる七瀬の首にマフラーを巻き廊下を通り外に出る

「さむいなぁ」

「ほんとだね。」

「あんまり人おらへんのやね」

「穴場だからね」

「そうなん?よう見つけたなぁ」

「でしょー。」

先を歩く七瀬の楽しそうな姿に、必死で休みを合わせ松村や生田に協力してもらい穴場であるこの場所を予約することが出来たことを心の底から嬉しく思う

「まいやん!みて!亀!亀おんで!」

「ほんとだ。かわいいね」

「せやなぁ」

ふにゃっと笑いながら寒いのか麻衣くっついてくる七瀬の手を握りポッケに入れる

「いひひ。ななが手繋ぎたかったん気づいてたん?」

「ううん。私が繋ぎたかっただけー」

「通じあってたんやっ」

「そういうことだっ」

「なな、まいやんの手大好き。なんやろ、安心すんねん」

「えー?手だけ?」

「ちゃうよ!」

「うんうん。他に私の好きなところは?」

「え、言わへんよ」

「ぇぇぇぇ。言ってくんないのぉ?ぶーぶー」

「ぶーぶーやあらへんよ。言わへん」

「ぶー!そんなこと言う七瀬にはこうだっ!」

楽しそうに笑う七瀬を引き寄せキスをすると見せかけて抱き寄せる

「ふふふふ。キスされると思ったでしょ」

「別に...思ってへんし」

「えー?だって、顔引いたじゃん」

「それは。びっくりしたから」

「ふーん?」

少しむっとした表情で口を尖らせる

はっはーん。これはキスして欲しいんだな?
言われなくてもするさ

離れようとする七瀬の頬に手を添え触れるだけのキスをする

ちゅっとリップ音を鳴らしながら唇を離すと顔を真っ赤にした七瀬が目に入る

「ほ...ほら...したやんか...」

「うん。したかったんだもん」

「ここ外やで?」

「何か問題が?」

「問題はいっぱいあるやろ」

「そうかなー?七瀬が可愛いのが悪いねッ」

「なんやそれ!ななは悪くない!可愛いんは...まいやんやん」

「え?」

顔を背け恥ずかしさからかフリーズしたままの麻衣を置いて旅館に戻ろうとする七瀬を追いかける

「デレた?デレたの?」

「うるさいー」

「んふふふふ。かわいいなぁ!」

「あほ!声大きいわ」

大きな声を出す麻衣の口を塞ごうと振り返った七瀬を抱き寄せ今度は深くキスをする

一通りが少ないとはいえ0ではないが、道行く人はその光景を日常の1つであるかのように過ぎ去っていく。

「っ。ここ外やで?何考えてるんっ」

「回り良く見てみな。だーれも気にしてないでしょ?」

「...せやけど」

「みんな、自分の恋人に夢中だから。キスぐらいなら気にしないよ。」

「そうかもしれへんけど、そういうんは...二人っきりのときにしたいやんか...」

「んなっ!はい。かしこまりました。部屋に戻りましょう」

七瀬の手を引きスタスタと足早に部屋に戻る
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