劇団員たちと見る夢
□君に捧げるおかえりなさい
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学校が終わり、寮に戻るとすぐにカントクの姿を探す……
キッチンを覗くと、愛しいアンタがいた
「…………エプロンしてる」
「え…?あ、真澄くんっ
お帰りなさい♪」
エプロン姿で出迎えられるなんて、俺は幸せ者だ……
「エプロンとか、マジ最高……
可愛すぎ………」
「…はいはいw
それよりも、真澄くん……」
「……………?」
カントクが俺に向き直る
「ただいま、でしょ?」
「…………ぁ………
ただいま…………」
俺がそう言うとカントクは満足そうに笑って言った
「真澄くんからただいまって言ってくれていいんだよw」
そうしてまた夕飯の仕込み作業を続けていた
この寮に来てから、カントクが「おかえりなさい」と出迎えてくれるのが何より嬉しかった
逆に俺は………「ただいま」を言うことに慣れていない
昔から、家に帰っても誰もいなかったからだ
「今日なに?夕飯……
それハンバーグ?」
「そう!臣くんがハンバーグ焼こうって♪
それに〜………
カレーをかけようと思います!\(^^)/」
「…………アンタの作ったものなら何だって食べる」
ーーーーーーーー
「カレーかけなくていいって!💦
普通にハンバーグとして食うから!」
「え?!天馬くん、何で?!o(T□T)o
わたしのカレーかけて食べてみてよ〜」
「いらねぇから!」
………今日の夕飯も騒がしい
騒がしいのは嫌いだけど、その中心にいるのがアンタだから苦じゃない
「……ハンバーグ死守」
「幸くんまで!ヒドイ😭」
するとそこに……
「ぁ、至さん!おかえりなさい」
咲也が帰ってきた至に気づき、声をかけた
「ただいま〜……」
至はそのままキッチンに立つ監督に後ろから近づき……
「ただいま〜」
「わ!至さんっ おかえりなさい」
カントクは少し驚いたように振り返り、ヤツにそう言った
「今日なに?ハンバーグ?
………匂いはカレーだけど」
「ハンバーグカレーにしようと思ったんだけど、みんなカレーかけようとしなくって!」
「…………俺、おろしポン酢で食べよう」
「えぇ?!何で何で?💦」
「…………www」
……………奴とカントクとの距離が近くて、むかつく
それに、至のあの「ただいま」は
俺にはできない、すごく自然なものだった……
俺の隣で咲也と椋が何やら話している
「エプロンしているカントクとスーツ姿の至さん、すごくお似合いだね/////」
「わかります!至さん、少女漫画に出てくるハイスペック王子様みたいですっ////」
……アイツが王子様のわけない、と心の中で吐き捨てつつハンバーグカレーを頬張った
ーーーーーーー
次の日も、学校から寮に帰ってきた俺は
いつも通り監督を探す
今日もカントクはキッチンにいて、何やら作業をしている
こちらには、まだ気づいてない
『真澄くんからただいまって言ってくれていいんだよ』
カントクの言葉が思い出された
俺はカントクのことが好きだ
カントクが望むことなら何だってできる
それなのにどうして………
『ただいま』が言えないのだろう
それでも、俺がただいまと言ったときの
カントクの笑顔が脳裏に浮かんだ
「……………ただいま
カントク………ただいま…………」
ホントは至みたいに、さらっと自然な感じで言いたかった
周りから新婚夫婦みたいと言われるように
俺の言葉にカントクが振り返った
「真澄くん……! おかえりなさいっ♪」
「………………////」
いつも以上に笑顔が可愛いのは気のせいだろうか
「へへへ……////
真澄くんからただいまって言ってくれたね」
何やらお菓子の生地をこねながら、カントクが言った
「万里くんから聞いたよ〜
万里くんも真澄くんも鍵っ子だったから…
ただいまって言い慣れてないんでしょ?
………でも寮にはみんながいるから
ただいまってこれからも言ってね♪」
いつも以上に笑顔が可愛いのは、気のせいなんかじゃない
「…………ただいまって言う
ここにアンタがいるなら、何回だって言う……
ここにアンタがいるなら、必ず帰ってくる」
………欲しかったんだ
自分の帰るべき場所が
ただいまを言える場所が
「アンタがいるなら……… 必ず………」
俺の前に立つカントクの、その肩に俺は自分のおでこを乗せた………
泣いてなんかいない……
「うん……… わたしも言うよ
おかえりなさいって
何回だって言うから♪」
「…………………うん」
………子ども扱いされたくないと
いつも思っている
カントクと並べば恋人か夫婦に見られたい
でも今日は、カントクが優しく背中をさすってくれるのが……… すごく嬉しかった