劇団員たちと見る夢

□前世の恋があるならば
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「この世界であなたに出会ってから……

あなたを想わなかった日は1日だってなかった………」



えっと、あー……




では、何故……



今まで黙っていたのですか?

あなたがここに来てから、かなりの時間が経っているというのに……」




わたしも思い付く限りの台詞で、即興劇を続けた








「それは…………」







そう言って至さんは少しだけわたしから体を離し……
真っ直ぐわたしの顔を見つめた



そして手を伸ばし、そっと髪を撫でてくれた







「それは………




この世界でのあなたが、とても輝いていたから



たくさんの仲間に囲まれ、その中心で笑うあなたは


前世で出会っていたときよりも明るく輝いていた



そんなあなたに、暗く辛い前世の記憶を呼び起こさせることを躊躇(ためら)ったのです………」






至さんに真っ直ぐ見つめられ、わたしも視線を反らすことができなかった




たくさんの仲間に囲まれ

輝いている………





これは芝居だけど、その台詞がやけに心に響いた


そして、胸の奥が温かくなる……







一呼吸おいて、わたしは至さんに微笑んでみせた



「それでもわたしは、思い出せてよかった



だって………






愛したあなたのことを忘れたままだなんて











寂しいでしょう……?」




「…………監督さん………」


「ふふふっwww

こんな長いアクトになるなんて思いませんでしたよ〜」







至さんがわたしのことを監督と呼んだので、わたしは即興劇を終わらせた





「至さん、やっぱりこういう設定が好きなんですねw

わるぷ…?なんとかの夜って何ですか?」





大根役者とはいえ、それなりに演技をしていたわたしは緊張から解放され、力が抜けて一気に笑いが込み上げてきた



だけど至さんは黙ったままで……





「………? 至さん…?」


「…………ねぇ、監督さん


今のって全部アドリブ?





どこかで会ったことがあるかもって…

本気で思ってたりしない…?」


「………え?」



至さんは真っ直ぐわたしを見つめたままだ


質問の意図がわからず口ごもっていると……










「いや…… 何でもない

さ、冷えてきたし、中戻ろうか」



至さんはそう言って笑うと、バルコニーから寮の中へと歩きだした




「そ、そうですね」



わたしもその後ろを付いて歩いた




華奢だけど、やはり男らしさを感じさせる至さんの背中を見ながら

わたしは思うことがあった







「ぁ、あの… 至さん」


「ん……?」


「至さんこそ…… あの、その〜………



全部、今思い付いたことですか……?」






そう問いかけると、至さんは再びわたしを見た






「…………いいや、1個

前から思ってたことを台詞にしてみたよ」


「ぇっ……… それって……?」




至さんがにこりと笑った











「前から思ってたんだ















俺の前世はワルプルギスの夜によって終わってしまったって😄」

「そ……っ!それ?!💦

てかその、ワルなんちゃらって言いたいだけですよね?!😰」


「ぁ、バレた?w

てか俺の前世はやっぱり魔○少女だったんじゃないかって思うときがあるんだよね〜」






至さんは可笑しそうにケラケラと笑いながら、寮の中へと入っていった


わたしもそれに続く………








(………全部、即興で思い付いた台詞だよね)






そう思いはしたが、あの台詞はやはり忘れられない……








仲間に囲まれて、輝いていたい





そして思う




彼らを、彼を……









もっと輝かせたい ーー咲かせたい













「ーー至さん、またやりましょうね♪」




そう言ったわたしに

至さんは笑顔で返してくれた


























〜fin〜





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