弱虫ペダル 過去編

□vier
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チュン チュン



「ん〜‥」



開けかけの箱やその中身が無造作に置かれる部屋

唯一可愛らしい天蓋付きの白いベッドが綺麗に置かれてる

その部屋のカーテンから木漏れ日が差し込む


外は小鳥が鳴く時間


ベッドの上のお姫様は木漏れ日の眩しさと小鳥達の歌声で目を覚ます



「‥朝‥‥何時‥」

スッ と枕元に置いてあるiPhoneに手を伸ばした


10時47分



「えっ
ヤバい‥寝過ぎた!」

(今日は午後から鳴子くんが大阪案内してくれるのに)


予定では8時には起きて、部屋づくりをするはずだったのだが



「‥最悪
これじゃあお部屋綺麗にする暇無いじゃない」





昨日 鳴子に手伝ってもらってリビングはなんとか完成している


あとは自分の部屋のみ


一人暮らしだから、そんなに整理する様なものは無いんだけれど

新学期始まる前に部屋を完成させ、残りの時間はゆったりとした時間を過ごしたいものだ


(午前中に終わらせてゆっくり鳴子くんと遊びたかったな‥)


考えている間にも時間は過ぎて行く



10時52分


「‥シャワー浴びよう」






ピーンポーン



と、行動しようと思ったらチャイムが鳴った



「もぅ 忙しいのになぁ‥‥鳴子くんじゃないよね」



チャイムが鳴ったので玄関へ行く

「はーい」


扉越しに返事をし、相手を確認する


「カンサイ宅急便ですー」


(ん?荷物?)




ガチャリ


「はい」



「如月さんですか?
荷物届いてるんで、ここにサインお願いしますー」




「はい
如月です」

(やっぱり荷物?何だろう)


ナナはボールペンを借りてサインをする




「どーもっ!荷物大きいし重いですよ
どう致します?」



ナナは家にとりあえず立て掛けてあるその荷物を目にした


(この大きさ‥‥あぁ!思い出した)


「大丈夫です
このまま受け取りますね」


ニコッと微笑むと ほなお気をつけて と宅配のお兄さんも微笑んで去って行った





「届くの早い
さすがはAmazan」






ーーーーーーー数日前


飛行機の中



「ナナちゃんは中学校のお祝いに何が欲しいの?」



欲しいものかぁ〜。と欲しいものを連想させるナナ

「ん〜〜」


「飛行機降りる前までに決めておけばいいさ」


「それも、そうね!
ナナちゃんゆっくり考えて」



「うん、そうするね」




そして、大阪に飛行機が到着

降りる前にナナが口を開いた

「あのね、お母さん‥お父さん」


「なぁに?(なんだ?)」


「わたし、自転車が欲しい」

真っ直ぐ両親の瞳を見てそう答えた


すると両親はお互い顔を見合わせて微笑む



「分かったわ
楽しみにしといてちょーだい」

「この前まで乗ってたの色が流石に子供っぽくて処分してしまったからな」



「後で欲しい自転車の画像や希望の色を連絡してくれたらお母さんが注文するわよ」


2人の言葉に ありがとう と笑顔で言った



ーーーーーーー




ふんふんふん〜♪


鼻歌混じりでナナは箱を開ける



「わぁぁあ
可愛いっ」


中に入っていたのは両親に送った画像通りのピンクゴールドの自転車

普通の自転車だけど付いてるカゴがブラウンで車体はピンクゴールドというお洒落なものだ



ナナはその自転車を庭にとりあえず置いといた



時刻は11時10分


「早くシャワー浴びなきゃ
鳴子くん来ちゃうよ」














ーーーーーーー


シャワーから上がって
身支度を済ませた



「よし、これで準備オッケーっと」



ピーンポーン


本日2回目のチャイムが鳴った



「今度こそ鳴子くんかな?‥まだ12時なんだけど」





ガチャリ



「はー‥「如月さぁぁぁぁぁぁぁぁあん!!!」


返事をして扉に手をかけたら鳴子が大声だして玄関に入って来た


正確にはまだ返事をしていないが、入って来た



(‥どうしたんだろう。ってか今勝手にうちに入って来たよね‥‥)



「な、鳴子くん‥どうしたの、そんな大声だして」



すると輝かしい瞳で答えた



「このチャリごっつかっコェェやん!!
なんてか如月さんに似合っとる」



「あぁ‥自転車、さっき届いたの」



「ピンクゴールドとかイカしとるな
グッジョブや如月さん」

ニッコリ


「‥‥‥‥‥」


鳴子の笑顔を見て頬を赤らめ固まるナナ



(鳴子くんの笑顔っていつ見ても素敵だなぁ‥)



「あ、なにぃ
如月さん、もしかしてわいに褒められて嬉しすぎて声出ないんちゃいますのぉ」


悪戯にナナに問う


ドキッ


(鳴子くんって色んな表情するのね‥)



「あ‥あ、あ、ありがと
鳴子くんって自転車好きなの?」



「如月さん、何ゆーてますの
ワイは自転車のスペシャリストや!」

ドヤー と鳴子がキラキラしている


「そ、なんだ‥えっと‥すごいね」


遠慮がちにナナは言った


すると鳴子はキラキラオーラを纏ったまま更に続ける



「せやろ せやろーー!
ワイはな、小3の頃から自転車一筋やねん
特にロードは熱いで!
如月さん、ロードレーサーって知ってます?!
別の言い方ロードバイク言うんやけど
メチャクチャカッコエェんやで
スピードもごっつい出てな
車よりバイクなんかより何倍も速いんや!
あ、この浪速の天才スピードマン鳴子章吉様が乗るからかもしれへんけどなっ
カッカッカッカーーッ」


ナナは目を丸く‥いや、点にして頭に何個かハテナを浮かべていつも以上に高らかに笑う鳴子にやや関心を抱いて見守っていた



「へ、へー
鳴子くんってロードバイク乗ってるんだ すごいね「せやろ!せやろ!もっと褒めてくれや」


(‥完全にペース持っていかれてる私)



「すごくカッコイイと思うよ
鳴子くんの乗るロードは速いんだもんね
見て見たいな‥」

ニッコリ


(お‥お、如月さんの笑顔いつ見ても可愛エェ)


鳴子が少し顔を赤くして、口をキュッとしているのでナナは首を傾げている


「ん?」


そうしているのも束の間、拳をグーにして鳴子が言った



「よっしゃ!
如月さん見たいって言ってくれたな、ワイの走るとこ」

やっぱりロードのことになると瞳が輝く鳴子

その様子にナナは圧倒される

「‥見たいな」

そう口にして、少しもじもじする




「よし
そうとなりゃー今から出発や
ワイのいつも練習してる所連れてったる
ワイの余りの格好良さに惚れてまっても知らんからな!」



「ホント?!
私が一緒にそこに行ってもいいの?!わーい」



(お、如月さんがはしゃいどる
なんか、照れ臭いな‥
ま、かっこいいとこ見せたる
んで、惚れさせる‥‥惚れさせる?!ってワイなに思っとんねん)


鳴子の頭の中は忙しそうだった




「あ、鳴子くん そういえば大阪の行きつけの場所とか
行きたい場所があったら連れて行ってくれるって昨日言ってくれてたよね‥?」



ギクッ
「しまった‥」


「‥今、しまった って言った‥」



「まぁええやん
また明日な!
今日はワイのロードに付きおーてくれや」




「‥‥う、ん」


(そんな笑顔で言われたら拒否権なんてなくなるよね)
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