地獄への道は善意で舗装されている。
□大好きな海洋生物さんと!
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仮免取得というのは、1年生にしては早い行事である。通常は2年になってからが多く、そのため1年生にして仮免試験にのぞむ私達は少々厳しい戦いとなる。
しかし我らがA組は、一次試験は全員突破、誰一人欠けることなく二次試験に進んだ。B組はどうだろうか。上手くやれているだろうか。
そんなことより!二次試験において、要救助者を介抱するという任務が与えられている受験者たちだが、今の私には足腰の力が抜けそうな衝撃的展開が待ち受けていた。それは!
「ぎゃ、ギャングオルカぁっ!」
二次試験の仮想敵として、ギャングオルカ達が現れたのだ。私がヒーローを志すきっかけとなったあのヒーローが!
興奮しないことがあろうか。吐きそうだ、あのとき以来会っていないもの。彼が私のことを覚えてるとは思わないけれど、やはり嬉しい。
「何を突っ立っている、小娘ッ!」
ギャングオルカやサイドキックたちの攻撃は凄まじかった。やはりプロとの差は大きい。この辺りに要救助者はもう居ないようだけど、ここら辺から敵たちをバラまかないようにしなければいけない。
ただ倒すだけじゃダメだ、大人数の戦いであることを視野に入れないと。
「とりあえず敵は単調な攻撃しかしない!だから壁とか作って……隔離!」
近くにいた轟くんには氷、私はそこら辺のガレキやコンクリートで壁を作っていく。薄すぎては破られる、厚く強固なものを……!そうして作った壁は、彼らと同時に私達も逃げ場はなかった。しかしまぁそれでこそ……と言うものかもしれない。
轟くんは他校の人間と喧嘩をしていた。相手は風を扱う個性らしい。どうやら知り合いっぽいが、物凄く優秀な人たちなんだからしっかりしてよ!
「轟くん!それから風の人!敵はそっちじゃないよ!あとねぇ……!」
ギャングオルカは言ってみればシャチ。轟くんの炎と彼の風ならば、かなり有効なはずなんだ。仲良しこよししろとは言わないけど、ヒーローになるなら喧嘩なんて真似は良くない。だいたいそんな姿勢であのギャングオルカに勝てるわけないでしょ!?ギャングオルカは強くてカッコイイスーパーヒーローなんだから!
……挨拶くらいしてもいいだろうか!
「こんにちは、ギャングオルカ!貴方と対面する日が来るなんて、夢にも思っていませんでした!」
これはとっても光栄なことだ。この試験のために日夜努力した成果を、彼にお披露目できるなんて……涙が出るほど喜ばしい。憧れの彼だからこそ、本気で、精一杯の力で戦える。
「覚えちゃいないでしょうけど、海で溺れる私じゃなくなったんですよ」
呑気に話している場合ではない。けれど口が動いてしまう。サイドキックたちのコンクリートガンは今も辺りに飛び散って、私の体にもついていく。固まって動きを鈍くしては受験者の弊害となるそれは、私には何の苦もないものだった。
そして今の私には動きなんて必要ない。ただこちらに気を引きつければいいだけだ。
「あちっ!?」
「なんだ!」
たくさん集まっていたサイドキックたちの一部が騒ぎ始めた。壁にそって炎と風が姿を現し、彼らに襲いかかる。風で巻き上げられた者、炎から逃げた者、それぞれいるだろうが、それらは全て、行動不能となるだろう。
「グランド・ブラックアウト!」
地面がぐるぐる渦巻いて、やがてハリケーンのように大きくなり、人や物を巻き込んで暴れていく。ステインと戦った時の"あれ"だ。必殺技として大きさや威力などを上げ、使えるようにした。
彼らとこれによってサイドキックたちは片付けたと仮定しても、ギャングオルカがどうにかなるとは思えないし……。
「ぐ、ぁ……!?」
「なかなかやるな。だが……」
顔面を容赦なく掴んだギャングオルカ。手が大きすぎる、力も強い、頭が割れそう、死んでしまう!
「は、な、し……て……!」
これ以上は、ほんとうに……!というところで、タイムアップの合図が鳴った。手は離されたが痛みは消えない。試験という場で、本当に殺そうとは思っていないですよね、ギャングオルカ。
「そんなザマではまた溺れるぞ」
「え」
ギャングオルカが私に話しかけてくれたかと思った。だけど彼はこちらを見てもいなかった。受験者は集まってほしいと放送がかかり、私たちはその場を去ったが、やはり、ギャングオルカのことが気がかりで、最後に一言だけ!と思い叫ぶ。
「ありがとうございました!」
彼の反応は見ずに走った。
さて、試験の結果だ!飯田くんの方はどうだったのかな、上手くいったかな。
「二次試験もみんな受かったらいいね。……風の人も!」
「感じイイっすね!アナタ!」
「それはどうも!」
書きたいこと書いたせいでまとまりがないのは申し訳ない。ギャングオルカが恋人なのかって感じですね。