ジョジョの奇妙な冒険
□顔に似合わず、とはこの事
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「ンまァ〜いっ!!」
「ほんと!? 一口ちょーだい!」
「やだね! 咲涼はてめーのがあるだろ!」
「ケチ!!」
毎週のようにここに通うようになってから、どれくらい経つだろうか。
「私だってあげないから!!」
「構いやしねぇよ!」
最初こそ怖かったけど、いつの間にかこうして一緒にパフェを食べに来てて、それが日課だった。
友人も、初めは「男と放課後にカフェなんて、絶対気があるわよ、良かったわね!」なんて言っていたが、相手が億泰くんだと分かると手のひらを返したように焦っていた。
私のことなんだからあの子が焦る必要もないのに、「あんな不良やめなさい!」って母親みたいなことを言って。
まぁ、見た目はこんな感じだし、いかにも不良なんだけど、中身は全然そんなことないんだよなぁ。
「あ、億泰くん、そのパフェ、イチゴたくさん乗ってるんだね!」
「あたりめーよ! 俺ァ今日はイチゴの気分だからな!」
クリームを口元につけて笑顔を見せる億泰くん。
子供みたい。でもそれがまた可愛いんだ。
億泰くんは何でも殴って解決しようとする。
本当は殴る気がないとしても「とりあえず殴るぞって言っときゃいいや」的精神だと思う。
それくらい「殴るぞ!タコが!!」と言う。
そんな彼は、パフェやら何やら、すなわち甘い物が好きなようだ。
私も甘い物は結構好きだが、それでも引くくらい甘い物を食べる。
先日はチョコの気分だと言って、とんでもなくくどいパフェを完食した。
「クリームついてるよ」
「ん、あァ、ほんとだ」
ぺろりと舐めとって、また食べ進める億泰くん。アイスが溶けていくのも忘れ、私はそれを見ていた。
たぶん、好きなんだと思う。じゃなきゃこんな不良と二人でカフェなんて来ない。
例え友達だったとしても、気のない人とは来れないだろう。誰かに見られて勘違いされたら嫌だもの。
それに、幸せそうに甘い物を食べる彼を眺めていると、私も幸せになってくる。
「…咲涼は食わねぇのかよ」
「食べてるよ!」
「嘘つけ! 食べねぇなら俺が食っちまうぞ!」
「あ! ちょっと!」
勝手にスプーンで私のパフェを取っていく。
突然のことに私は億泰くんの手首を掴んでスプーンをくわえた。
果物で作られたソースの控えめな甘さが口いっぱいに広がる。溶けたアイスも、まるでソースみたいでマッチしていた。
「咲涼、てめーっ……!」
「うん?」
「それ、俺のスプーンだろうがっ……!!」
──顔に似合わず、とはこの事。
(咲涼って、大人しそうな顔して意外と大胆なんだなぁ……)
(咄嗟のことで、つい……!)
(人間ってすげぇなぁ……)
(ちょっと!? 聞いてんの!?)
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