ジョジョの奇妙な冒険

□心が読める力を貰った
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(あの女うざいなぁ)

(何で俺がやらなきゃなんねぇんだよ)

(ジジイが。しんじまえよ)


私の目に飛び込んでくる文字達。吹き出しの中で禍々しく揺れるそれらは、何故か私にしか見えない。


(邪魔だなぁ)


私が心の中で呟いた言葉も、吹き出しとなり近くを浮く。
虫を払うように軽く手を振れば、簡単にそれは崩れて消えた。


いつからか私にはこんな現象が起きていた。

すれ違う人やクラスメイト、様々な人の心の声が、マンガの吹き出しとしてその人に引っ付く。

それだけのもの。


見えるようになったら如実なもんで、どこもかしこも悪口とか愚痴とか胸糞悪いものばっかり。

当たり前ではあるんだけど、もっと良いこと考えなよ、と思う。

見てるこっちが気分悪い。


「水無月」
「空条くん? おはよう」
「あぁ」


最近話すようになったクラスメイト、空条くん。いわゆる不良。制服は着崩すどころか鎖までついているし、何よりガタイがいい。


(カッコイイんだけど怖いよなぁ)


あんまり話したくない。


「……俺が怖いか?」
「えっ」
「怖いか?」
「えーっと…まぁ、ちょっと…」


(ビックリした…)


「驚いたか?」
「え、うーん、突然だったし驚いたかな」


(ほんと突然。何なんだろう)


「お前のそれ、無意識だろ」
「それ、って?」


無言で指をさした先。それは私の心の声を出した吹き出しで、つまり、彼には見えている。


「見えるの?」
「まぁな」


てめー、スタンドって分かるか。

そう問われ、横に首を振る。初めて聞いた。


「じゃあ、コイツが見えるか?」
「えっ、誰これ」


空条くんの背後に居る何か。
形は人間なんだけど、肌の色が人間じゃない。
あと格好がやばい。露出狂として捕まりそう。


「コイツはスタープラチナ。俺のスタンドだ。露出狂じゃあねぇ」
「うわバレてた!」


空条くんは色々説明してくれたけど、頭の悪い私にはさっぱり理解できなかった。

まぁあれだろう、とりあえず私以外にもこういう変なことができる人が居る。


「ところで、お前、俺の声は読めないのか」
「空条くんのは読んだことないよ、だって出てこないし」
「そりゃあ残念だ」
「空条くんは何か考えてたら私に報告してくれていいよ!」


自分で言ってから、空条くんが私に一々考えてることを報告しに来る図を想像したら、思わず笑ってしまった。

だって絶対おかしい。


「あぁ、じゃあ一つ言わせてもらうが」
「はい」
「俺ァてめーのこと好きなんだが」
「はい?」
「付き合うだろ?」
「えっ」


(嘘でしょ、空条くんが?)
(本気だぜ)


「なぁ?」


エメラルドグリーンの瞳はギラギラ輝いて。
逃がす気なんてないな、とぼんやり考えた。






──心が読める力を貰った。

(呑み込まれそうで恐ろしい。)




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