ジョジョの奇妙な冒険

□行き場のない部屋
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「スタンド攻撃を受けちまったみてぇだな」


彼は壁を叩いて呟いた。


「俺のスタープラチナでも壊れねぇ」


私は置いてあったソファの上で体育座りをしていた。自分でも震えているのが分かって、ぎゅっと膝を抱える。



さっきまで私と彼…空条承太郎は学校に居た。
私達はクラスメイトでもないし仲良くもない。偶然居合わせただけで、1度だって話したこともない。


が、何故かこうして、見知らぬ密室に閉じ込められている。


空条くん曰く『スタンド攻撃』らしいけど、そのスタンドってのが私には分からない。

空条くんは『ここに居る』と言うが、残念ながら私には見えず、触れもしないし、特別な能力、としか解釈出来なかった。


「人間を閉じ込めるスタンド…か」


やれやれ、と呟きベッドに寝転んだ空条くん。諦めたのか、疲れたのか。


「……く、空条くん、どうするの、これから」


この部屋は快適だ。生活に必要なものは何でも揃ってる。理屈はどうあれいつの間にか食べ物も出てくる。

けれどそれは閉じ込められているという前提がなければの話。


こんな訳の分からない空間で、こんな怖い人と一緒に過ごすなんてごめんだ。


「さぁな」
「いっ、一生ここから出られないの?」


空条くんは少し悩んで、「出られるだろうが、俺の力じゃどうしようもねぇ」と言った。

いつになるかも分からない、とも。



「それまで、ここで生活するの?」
「そうなるな」


あっけらかんとした様子の彼とは対照的に、自分でも目が泳いでるのが分かる私。

だって、こんな所で生活するなんて、本当に勘弁して、むりだよ。


「水無月」
「なん、で、名前知ってるの…」
「ンなことはどうでもいいだろう」


起き上がって近付いてきた。じりじり後ずさっていくも、壁にぶつかって離れられない。


「あの、空条くん」
「この状況、好都合だぜ、俺は」
「な、なに言ってるの」


手首を掴んで無理やり私を立たせた。視線が交わる。普段なら、その目はとても綺麗だ、なんて思うのかも。


「お前に逃げ場はない。俺が何をしようと邪魔はされない。最高じゃあないか?」
「え…あ……や……」


彼は楽しんでいるんだ。閉じ込められている今を。逆に利用してしまおうと。そう思ってるんだ。


「わ、私なんかやめた方がいいよ…っ…」
「お前だからだ」


俺は見てたんだ、ずっと。水無月の髪は綺麗だ。友人と話しているときの笑顔は愛らしい。好物を食べているときの無防備な表情もいい。


「だが、今こうして俺に怯えている顔も、そそるじゃあねぇか」






──行き場のない部屋。

(救いの手はどこにもない。)




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