ジョジョの奇妙な冒険

□目移り厳禁。
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一緒に行きたい、と言い出したのは咲涼からだった。SPW財団に勤めるそいつは俺と共に行動することが多く、年の割には幼い。

いつだって自分のしたいことはしたいと口に出すし、静かに暮らすということが出来ない。真面目な会議でも黙っていられず話したがる始末だ。

みんなそのことを知っているからあまりうるさくしないものの、咲涼の悪いところ、と言える。



「……遊びじゃあねぇぜ」
「分かってるよ、でも承太郎のおじさんでしょ? 見たい!」



日本に来る時だってかなり渋った。遺産相続がどうとか、そういう問題を話さなければならないから日本にやって来ただけで、コイツがしたいのであろう、観光が目的ではない。

これから仗助に会いに行く俺に着いてこようとするのだって、恐らく「年下のおじさんなんて聞いたことがない、どんなものだろうか」なんて考えているはずだ。

面白がってるだけで。



「ね? おねがい!」
「……仕方ねぇな、あまり出しゃばるなよ」
「やったー!」


本日何度目か分からない溜め息を吐いた。





「貴方が東方仗助?」
「……承太郎さん、この人誰っすか?」


学校帰りの仗助。無論、億泰や康一くんも一緒だ。


「水無月咲涼、ただの腐れ縁だ」
「恋人っすかぁ!?」
「ちょっと億泰くん! 失礼だよ!?」


こういうとき、康一くんはしっかりしているな、としみじみ思う。自分が高校生の頃はどんな風だっただろうか。

……お世辞にも良いとは言えないな。



「違うよ、同僚っていうか」
「咲涼さん恋人居ないんすか?」
「綺麗だしよぉー、居そうだよなぁー!」
「居ないよ? 募集中、って感じかな!」


咲涼の言葉に、少しだけどきりとした。柄にもなく。

何を隠そう水無月咲涼は俺の想い人なわけで、何歳になろうと色恋沙汰はデリケートな話題である。

しかし男子高校生が美人と話せば自然とそうなるのも分かるもので。



「俺は? 仗助くんはどうっすか?」
「んー、可愛いからアリかな!」
「マジかよ!」


仗助の顔は、明らかに狙っている顔だった。年頃だ、そんなことに興味を持つのは当たり前だ。……分かってはいても、イライラは募る。


「でもまぁ……」
「俺は!? 仗助はそりゃあ良いだろうけどよ! 俺はどうですか!」
「……もちろん、億泰くんもアリ!」


にこにこと朗らかな表情で話す咲涼が嫌に腹立たしかった。アリかナシ、それだけのことだとしても、コイツには節操がなくて。アリとしか言ってねぇじゃあねぇか、結局誰でもいいんだろうが。

いつの間にか、矛先は咲涼へと向く。



「おい、いい加減にしろ。尻軽かてめぇは」
「……ひどい、ちょっと話してただけでしょ!」


不服そうな顔で俺を睨む咲涼。思わず舌打ちをした俺は軽くしゃがんで目線を合わせた。


「……てめぇは俺だけ見てりゃあ良い」
「それ、って、どういう……」


恥ずかしいことを言ってしまった、と後悔したが、それは顔に出さないよう気をつけ、「自分で考えろ」と呟きその場を去った。

仗助達は呆気にとられたように動かない。咲涼だけが俺を追いかけ、必死になっている。


「期待してもいいってこと!?」
「……勘違いすんじゃあねぇぜ!」


チャンスなのにそれを自ら踏みにじる自分が、これほど忌々しく感じたことはなかった。

期待してもいいか、なんて聞くくらいだ。それこそ、こちらだって期待していい。



「じゃあ仗助くんの所行っちゃうから!」


そう言ったきり、咲涼は1歩も動かなかった。俺の元へも、仗助の方へも。

俺が少しずつ近付いたって見つめてくるだけで。やがてほぼゼロ距離になった俺達。不思議と辺りは静かだった。



「……いいの? 行っても」
「良くねぇな」


行かせる気もない。

咲涼の細い手首を掴んで歩みを進めた。立ち止まったままでは思考がまとまらないような気がして、歩いていた方が気楽な気がして。

だが、やはり、足を止めてしまうのだ。


「好きだ」


今までつっかえていた言葉はすんなり口から漏れた。勇気も何も不要だったらしい。

必要なのは決意、といったところか。



「付き合ってくれないか」


驚きのあまりかぼろぼろ涙を流す咲涼は何度も何度も頷いて、しゃくりあげながら「もちろんです」とだけ呟いた。





──目移り厳禁。

(億泰はともかく、仗助は俺と顔が似ているからアリ、だと。どうやら随分と好かれているらしい。……やれやれだぜ。)









リクエストありがとうございました!承太郎さんは何度書いても上手く行きそうにありません……難しいです。

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