ジョジョの奇妙な冒険

□変な好かれ方をした。
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「東方。今日は美化委員の仕事があるからな、忘れるんじゃないぞ」
「……うっす」


美化委員の担当教師に言われ、俺は小さく頭を下げた。億泰が隣で微かに笑っていたので、とりあえず殴っておいた。


俺は別に、望んで美化委員になったわけじゃあなくて。だってよォ、美化委員っつーのは、掃除とかするもんだろ? そんなん誰もやりたがらねぇよな。

じゃあ何で美化委員になってしまったのかというと、委員決めの際に居眠りをしていたから。前の晩にゲームをしすぎて、寝坊こそしなかったものの日中の睡眠に繋がってしまったのだ。

俺は仕事を忘れるのだが、その度にもう1人の美化委員……確か水無月、という女の子のおかげで事なきを得ていたりする。


しかしまぁ、少しばかり忘れすぎていて、先程注意を受けたというわけだ。


「めんどくせぇなァ」
「けどよォ、女の子と一緒だろ?」


億泰は「羨ましいぜ……」と呟き、肩を落とした。コイツはそんなことしか考えてねぇのか?


「じゃあ変わってくれよ」
「それとこれとは話が違うぜ!」
「調子のいいヤローだ……」








時は経ち放課後。美化委員の仕事は、どうやら花壇に花を植えることらしい。さっさと終わらせたいところだな。

担任に呼ばれていたので、水無月に「遅くなる」とだけ伝えた。担任からの要件は大したことではなく、わざわざ呼び出すほどか?という内容だった。適当に返事をしていたら、それはそれでお説教に発展してしまい、「委員の仕事があるんで!」と押し切って花壇に向かう。


「悪い! 遅くなっちまってよォ!」
「東方くん……」


水無月に駆け寄った。軍手やジャージには土がついていて、一人で頑張っていたんだ、と思った。


「……おい?その花壇、どうした?」
「あ、いや、これは……」


水無月が植えたのであろう花は踏み荒らされていて、綺麗だったはずの花びらはバラバラに散っている。

それを水無月がやったとは思えない。何と言うか悩んでいる様子の水無月は今にも泣かんばかりの表情。美化委員も押し付けられたわけではなく自ら手を挙げたらしいし、例え花植えをやりたくなかったとしても、こんなことしないだろう。


「ご、ごめん、なさい……」
「何でアンタが謝るんだ?まさか自分でやったのか?」
「違う!… …けど……」
「だろ? じゃあ謝るんじゃねぇよ。ちょっと目を閉じてな」


水無月が目を閉じたこと、そして周りに人が居ないことを確認をして、俺はスタンドを出す。

心の中で頼むぜ、と呟いて、クレイジー・ダイヤモンドで花壇を直した。花びらはそれぞれの茎に戻り、土は元の均一さを現す。


「もういいぜ」
「……なにこれ、元通りだ……東方くんがやったの?」
「まぁな、見かけほど酷くなかったぜ」


信じられない、と言った様子の水無月。それは当たり前のことだが、世の中不思議なことは多いんだぜ。


「水無月、怪我してるな。腕見せてくれるか」


袖を捲りあげたせいで晒されていた腕に、大きくはないが擦ったような跡があった。これも治そう。血が滲んでしまっている。


「じっとしてろよ」


ちらりと水無月を見たとき、彼女は腕も俺の顔も見ていなかった。俺の頭上を、先程よりも驚愕の、困惑の表情で。


「それ、なんですか……?」
「……見えてんのか?」


水無月はスタンド使いだった、っいうのか。まさか。全く気がつかなかった。少なくとも俺たちに危害を加える気はないだろうが、やはり弓と矢の影響でスタンド使いに……?


「可愛い……」
「え?」
「すごく大きいけど、ピンク色だったりして、可愛い……」
「そう、か……?」


クレイジー・ダイヤモンドを少し屈ませて、近くまで寄せる。水無月は喜んだ様子で触ろうとしたがその手は通り過ぎてしまった。


「そいつはスタンドっつーんだが、スタンドにはスタンドでしか触れねぇんだ」
「スタンド……あ! 頭の形ハートだ、可愛い……!」


溜め息が出た。話聞いてるのか、こいつ。水無月のスタンドはどんなものか気になるんだが。


「お花も、腕の怪我も、この人が治してくれたの?」
「まぁそういうことになるな」


面倒になってスタンドを戻す。水無月は残念そうな顔で俺を見た。どうして居なくなったの、とでも言うように。



「スタンドは俺の意思でいつでも出せる。俺の一部だからな」
「そうなんだ……東方くん、ちょっとでいいから、明日も見せてくれないかな……?」
「はぁ?」






──変な好かれ方をした。

(スタンドに恋したのか? そりゃあ迷惑な……。)





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