最も偉大な発明家は誰か?

□年齢を聞くのはマナー違反ですか?
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ジョルトが敷地内を案内してくれると言ったけど、彼は急用ができてどこかへ行ってしまった。その代わりサイドスワイプが遊びに来ていて、あれこれ雑談をしている。

ふとジョルトとの会話を思い出してサイドスワイプに問いかけた。


「サイドスワイプは何歳?」
「えっ、俺?」


きょとんとした顔でこちらを見る。イケメンはどんな表情もイケメンなんだね。


「まー、人間で言うと二十二から二十五あたりかな」
「そうじゃなくて、トランスフォーマーとしての歳!」
「そっちか? えー、何歳だったかな」


万は行ったか……? いやいや、そこまでは行ってないな、でも五千だと若すぎるか? どうだったかな……。

そんな独り言を零しながらうんうん唸るサイドスワイプ。もはや次元が違う。長い時間を生きすぎて年齢が分からなくなっちゃってるんだもん。

今年俺って五十二? 三? あ、五十四だっけ? なんて馬鹿なことを言っているおじさんがたまーに居るけれど、その程度ではない。

ガンガン、なんて強すぎるノックが部屋に響いた。返事を待たずに開かれた扉から現れたのは……アイアンハイドさんだ! せめて返事はさせてくださいよ、ノックの意味がないです!


「水無月咲涼」


あと、何でこの人は私のこといっつもフルネームなんだろ。罪人だと思ってる?


「あっ! アイアンハイド、俺の歳って覚えてる?」
「あ? お前、自分で覚えてないのか?」
「それが分かんねぇんだよ。なー、師匠なら分かるだろ?」
「本人が分からねぇのに俺が分かるかよ」


ごもっとも。


「アイアンハイドさんは何歳なんですか?」
「……お前には関係ない」
「えー! 歳くらい良いじゃないですか」


見た目だけで言うと四十前後くらいかなぁ。五十歳までは行ってないと思う。外国人は実年齢よりも大人びて見えることが多いから、実際は三十代の後半くらいと見た。
うーん、でも、それにしては話し方がおじさんっぽいかな? 関係ないか。


「歳なんざ覚えてない」
「はははっ、そんなトランスフォーマーみたいなこと言って」
「……」


一瞬、部屋が静まり返った。えっ、えっ、なに、何か変なこと言った?


「アイアンハイドは戦うこと以外興味ねぇんだ。武器のスペシャリストなんだぜ」


沈黙を破ったのはサイドスワイプ。いつもみたいな明るい口調でにこにこしていた。


「武器のスペシャリスト?」
「おい、余計なことを……」
「なんだ、ほんとは咲涼にもキャノン砲見せびらかしたいくせに」
「うるさいぞ!」


ふたりの間で会話が進み、私は取り残されてしまった。

武器のスペシャリスト……言葉だけ聞くと、敵に回したくない感じだ。剣とか銃とか、色んな武器に精通してるってことなんだよね、きっと。なんなら格闘技もできちゃいそうだ。

高い身長にガッチリした体、圧の強い目。勝者の見た目をしている。


「キャノン砲ってどんなの?」


私が聞くと、サイドスワイプは嬉しそうに口を開いた。自分のことじゃないのに。からかってる様子だけど、きっと師匠がだいすきなんだね。


「黒いトランスフォーマーが両腕に装備してるやつだよ。すげぇ強いんだ」
「へぇー! かっこいい!」


黒いトランスフォーマー……確かにヤバそうな両腕をしていた。あんなのぶっ放されたら環境破壊も簡単だろうなぁ。


……そういえば、あの黒いひとは人間にならないんだろうか。名前も知らないし、ジョルトもサイドスワイプも話そうとしない。どうしてだろう。大してお互いに関心がないとか? でも仲間だから、関心がないってことはないよね……。


黒と言ったら、アイアンハイドさんは全身が黒い。
髪は綺麗な黒。肌は、黒いってほどではないけど、健康的に焼けている感じ。服は他の隊員と同じものを着ているけど、たまに私物らしき真っ黒のジャケットを羽織ってるのを見る。

それに、右目の傷って、他に誰か……。


「そんなことはどうでもいい! 水無月咲涼、場所の説明をしてやる。着いてこい」


酷く怒った様子のアイアンハイドさん。返事も聞かずに部屋を出ていってしまって、サイドスワイプと顔を見合せた。

焦る私とは裏腹に、彼は相変わらず笑っていたけど。


「ま、まってくださいっ」


急いで追いかけるが足が痛くて追いつけない。昨日の今日だから、さすがに走るのは無理!


「あし、いたくてっ……!」


一応こっちは怪我人なんですから。ただでさえ貴方は歩幅が大きくて歩くのも早いのに、私みたいなチビが追いつけると思いますか?

チビって言っても、アイアンハイドさんから見たらチビってだけですけどね!


「チッ……」


アイアンハイドさんは舌打ちと共に一度止まり、私が来るのを待った。私が追いつくと、不満気な顔をしながらもゆっくり歩き、私の様子を時々見ながら合わせてくれた。

彼にしてみれば、すごくのんびりで逆に疲れてしまうだろう。


「……優しいんですね」
「黙れ」


やっぱり怖い。





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