その他(短編)
□惚れた弱みの大往生。
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「バーダックさん、おはようございます!」
「…あぁ」
また来たのか、とでも言いたげな目で私を見るバーダックさん。だって会いたかったんだもの、来たっていいじゃない?
「今日はケーキ作ってきたんです!」
「甘ぇのは食わねぇぞ」
「そういうと思って甘さ控えめです!」
お皿に盛り付けたケーキを、フォークで大きく切ってがぶりと食べた。
テレビを見て食べ進めるものの、反応は全くなし。
美味しいのか美味しくないのか…。
「バーダックさん、どうですか?」
「悪くねぇな」
まだあんのか、と空になった皿を見て言うバーダックさん。
「もちろんありますよ!」
いつも私のことを馬鹿にしたり、てめぇの作ったもんなんか食えるか、とまでいうくせに、なんだかんだこうして食べてくれる。
前は食べられないくらい酷い味だったけど、今はたぶん結構いけるんじゃないだろうか。
それでも、彼の口に合っているかは謎だ。
今まで美味しいと言われたことはないから。
「咲涼、お前、毎日毎日飽きねぇのか」
「全く!」
むしろ楽しい。褒められなくても好きな人と一緒に居られる。それだけで恋する乙女は満足なのだ。
彼には息子どころか孫までいるし、昔は愛した人だって存在していた。そんな人と結ばれたいとは、思わない。
話すだけで、想うだけで幸せ。
「じゃあ、これからも来いよ、絶対な」
「…はい!」
──惚れた弱みの大往生。
(てめぇは俺のペットみてぇなもんだからな)
(あぁ、そういう…)
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