その他(短編)
□刹那、鳴り響く警告音。
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「私、戦うのって得意じゃないんですよね」
殴るとか気弾ぶっぱなすとか、野蛮じゃないですか?そのうえ罪のない人達を殺すなんて、ちょっと。
私、おかしいのかな。
「サイヤ人だろうが、てめぇもよ」
筋トレをしながら返してきたバーダックさん。無駄に熱気が伝わってきて暑苦しい。
なかなか乗ることのない二人乗りの宇宙船。一人用はとても狭いけど、二人乗りのは少し余裕があって、そこで彼はトレーニングをしていた。
別に鍛えたいわけではないらしい。ただ、暇だから、と。
コールドスリープ機能はついているんだけど、一人ずつ出来るわけじゃない。私が嫌だと言ったから、きっと彼もしないんだと思う。とても優しい人だもの。
ココ最近、変な夢を見る。
誰かが眠っている夢だ。それ以下でも以上でもない。死んでいるわけではなく、息はしていて、本当に寝ているだけ。
それがまた気持ちが悪い。いっそ死んでいる方が清々しいくらいに。
「まぁ、そうなんですけどね。でも何事も例外ってありますよね? 例えば、ギネさんとか」
バーダックさんの奥さん。あの人も戦うのは好まないと聞いたことがある。いや、違ったかな。
そういえば、ギネさんが寝ている夢も見た。いつだったかは覚えていないけど。
「アイツもそういうところはあるな」
「ですよね」
バーダックさんが寝ているところは見たことがない。自分が寝ているところも。
まぁ、他人を見るより自分を見る方が嫌かも。
不気味ではあるけど怖くはない。だからそんなに気にしてはいなかった。何かの暗示かもしれない、予言かもしれないとも思ったけど、別にそんなことはなさそうだった。
今まで、夢に出てきた人が死ぬとかはなかったから。むしろ全然関係ない人が消えた。
「お前、よく生きていけるな」
「褒めてます?」
「けなしてんだよ」
私だって色々苦労してる。能天気に生きてるだけじゃない。
……………え? 例えば? そうだなぁ、今晩の献立には悩む。それから明日の任務が嫌で胃が痛むし、来週母と会う約束もどうドタキャンしようか考え中だ。
下らないことばっかりだったようだ。
「いますぐにでも死ぬかもしれませんね」
「アホすぎてか? ちがいねぇな」
「ひどい」
そりゃあ私はアホかもしれないけれど。
「バーダックさん、大変です!」
「なんだよ」
「岩にぶつかっ…」
ぐらり。宇宙船は遠慮を知らず、大きく揺れた。
──刹那、鳴り響く警告音。
(やばい、なんて思う暇さえない)
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