その他(短編)

□貴方の名前を教えて!
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髪が風になびいた。ぱっと見それは、あまり手入れされていないようだが、よくよく見ると案外綺麗だ。

長くて量の多い髪の毛が視界を遮った時は何かと思った。急に何も見えなくなったから。


慌てて後ずさって状況を確認したら、大きな大きな男性がヤンキー共をこてんぱんに叩きのめしていたではないか!
なんて強い人なの。


「ありがとうございますっ!」
「あー、いや、いいさ、これくらい。それより大丈夫か?」


長い髪の毛を少し邪魔くさそうにしながら、私を心配してくれる男性。
目がちょっと怖いけれど、チェックのシャツが似合っていて、なんだか可愛らしい。

大丈夫ですと言えば、良かったとちょっぴり笑顔になった。


ここら辺ではあまり見ない顔だ。
この辺りは有名なお店とかもないし、大体ご近所さんは顔見知りなんだけど、彼はどこの人かな。


「ここら辺ではあまりお見かけしませんけど、どちらにお住まいですか?」
「最近あっちの方に越してきた。今日はまぁ、特に用はねぇけど、散歩がてら」


あっち、と言って指をさしたのは山の方。凶暴な動物も多いのに、随分とサバイバルな生活をしているようだ…。


「良ければ、私の家でお茶でもしませんか!」



この人が居なければ、私はヤンキーに金目のものを持っていかれていた。
ちょうどお金を下ろした時だったから本当に助かった。

私にとって彼はヒーローだ。お礼の一つや二つ、させてもらってもいいんじゃないだろうか。


「有難いけど、やることもあるしな。俺は帰るよ」
「ま、待ってください! じゃあ…!」




──貴方の名前を教えて!


(ラディッツ。彼はそう言った。)




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