僕のヒーローアカデミア

□愛に容姿は関係ない。でしょ?
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「ねぇ、常闇くん」
「残念だが俺は好きじゃないな」
「……まだ何も言ってないですけど」


突然だが、私は常闇くんが好きだ。しかし彼は今のように全く取り合ってはくれない。この厳しい学校生活ではそんなもの必要ないのか、それとも。



「どうせまた好きだ、とでも言うんだろう」
「そうだけど……」



一目惚れに近かった。とはいえ、最初は『カッコイイな』という憧れに似た感情だった。同じクラスになってときどき接するようになって、それで段々と……。


ありきたりかもしれないけどそれが過程だ。そして結果は出ていない。彼は本当にガードが堅い。



「他に好きな子が居るとか? だから私は迷惑?」
「……どうだかな」



肯定はしないが否定もしない。それは好きな子が居る、と受け取っていいの? やっぱり迷惑なんだよね?



「そっか……じゃあね! 私、帰るよ」



私は常闇くんに手を振って教室を出た。前方にはお茶子ちゃんやデクくんが居て、途中まで一緒に帰ろう、あわよくばお茶子ちゃんに話を聞いてもらおう、と廊下を走った。



「お茶子ちゃん!」
「っわ! びっくりしたぁ〜!」
「水無月くん!廊下を走るんじゃない!」



大きく肩を震わせて驚くお茶子ちゃん、同様に汗を垂らしているデクくん、委員長らしくキビキビ叱ってくる飯田くん。

彼らは本当に仲良しで、羨ましい。




「咲涼ちゃん……常闇くんは?」
「なんと! 見事!」


おっ? という風に目をキラキラさせてくる彼女。そして私は期待を裏切るのだ。



「玉砕しました……」



分かっていたことまではある。そもそも彼に私は釣り合わないし、だって私、成績も見た目も全然良くないから……。

それに、常闇くんに好かれていると思える節は一つもない。



「咲涼ちゃんはそれでいいの? 諦めちゃうの?」
「だって、わたし、どれだけフラれ続けてると思う?」



数え切れないくらいだ。その中の一度だって前向きな返事を貰ったことはない。嘘でもいいから好きって言ってほしかった。



「むりだよ、でも、すき、なんだよ……っ……」


誰も通らない廊下で我慢を知らない子供のように泣きじゃくる私を、お茶子ちゃんは抱きしめてくれた。小さい頃、母親に抱きしめもらったみたいな暖かさだった。


私には、お茶子ちゃんや皆が居ればいい……。







次の日。寝坊して家を出るのがいつもより遅くなってしまった。急いで急いで、なんとか時間には間に合いそう。


ふと下駄箱を見ると手紙が入っていて、まさかラブレター? なんて。

歩きながらそれを開く。そのとき、聞きなれたチャイムが無慈悲に響く。



「嘘でしょ!?」



バタバタと音を立てて走り、教室に駆け込んだ。このときほど重い鞄を恨んだことはない。



「おはようございます! セーフですか!?」
「アウトに決まってるだろ、アホかお前は。罰として放課後は課題な」
「えっ! せめて明日までとかにしてもらえませんか!? 先生だって私が馬鹿なの分かってるでしょう!?」







そんな会話を乗り越え放課後。ちなみに課題は倍にされた。


「くぅ〜〜きっついなぁ〜〜!!」


今日は皆とカラオケ行く予定だったのに!私だけ行けないなんて!


「そういえば、手紙……」


鞄にしまった手紙を取り出す。少しくしゃくしゃになってしまっているそれを開いて綺麗にして、読んでいく。

内容としては、放課後、体育館裏で待っている、とのことだった。ラブレターというより女子の怖い呼び出しって感じだ。

まぁいい。物凄く大切な用事ならきっと相手から来てくれる。



突然扉の開く音がして、ずっと一人だった教室に誰かが増えた。


「と、常闇、くん?」
「……水無月」


彼は私の隣に立って見下ろしてくる。小柄とはいえ少し怖い。


「なに、かな」
「手紙を出して待ってみたものの、課題の件を忘れててな。俺から来た」


手紙ってまさか、今読んでいた呼び出しのこと? 確かに字は綺麗だなと思ったけれど、なんでわざわざ常闇くんが?



「……勇気が出なかったんだ。俺は、完全な人間……とは、言い難いだろう。それで……

だが、正直に言おう。水無月が、好きだ」


時が止まった気がした。だって信じられないもの。あんなに告白して、あんなに拒まれて、その挙句好きだって?



「……嬉しい。私、常闇くんのこと、大好きだもん。それから……」






──愛に容姿は関係ない。でしょ?

(貴方の全部が好きなの。分かる?)





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