地獄への道は善意で舗装されている。

□すっごいクラスなんじゃないの?
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「……えーと」


私達の戦闘訓練。それは呆気ないというと相手チームに失礼だけど、一瞬だった。

障子くんはいいよ、その耳で相手の位置を計れた。だけど、だけども、私は何もしていない!役立たずだった。つらい。


「これ、私、居る意味……」
「考えるな」
「そっ、そうだね!」







お昼ご飯。今日はお弁当を持ってきてしまったが、一緒に食べてくれる方は居ないだろうか。


「咲涼ちゃん、お弁当?」
「葉隠さん!うん、そう、今日はお弁当持ってきたの」
「じゃあ一緒に食べよ!」


私の前の席に座り、ルンルンとした様子でお弁当を開く葉隠さん。中学は給食だったから誰かと食べることは毎日だったけど、お弁当となると気分は変わる。


「あ!からあげ!もーらい!」
「あー!ちょっともう!葉隠さんのハンバーグもらっちゃお!」
「……咲涼ちゃん」


箸をパタンと置いて真剣な声でこちらを見る(多分見ている)葉隠さん。急にどうしたんだろう、ハンバーグはダメだったとか……。


「さんってやめようよ!私達お友達でしょ!?」
「えっ?」
「名字じゃなく名前で呼んで!ほら!」
「えっ、あっ……と、透ちゃん!」
「はーい!じゃあご褒美にハンバーグだよ〜」


私のお弁当箱に入れられた小さなハンバーグ。確かに私が貰おうとしていたものだけど、なんだか複雑な気持ちだ。

はがく……透ちゃん!は不思議な子だと認識。


「からあげ美味し〜」
「……ハンバーグも美味しいよ」


しかしまぁ、名前で呼ぶくらいどうということはない。むしろ親しみやすいし良いことだ。


「食堂もいいけど、お弁当も楽しいね」
「そうだね!咲涼ちゃん、たまにはこうやってお弁当食べよ!」
「うん!」


毎日となると面倒だけど、気分転換には持ってこいだと思う。分け合いっこしたりとか、そういうのって青春って感じがするもの。





透ちゃんと昼休みを過ごして、そろそろ5時間目が始まろうかという頃。飯田くんや緑谷くん達が疲れた様子で戻ってきた。


「どうしたの?何かあったの?」
「あぁ、それが……」

「水無月」


飯田くんの言葉を遮るように相澤先生の声が聞こえた。仕方がないので先生のもとへ向かうと、「ちょっと来てくれ」と訳が分からず連れていかれることに。

やがて着いたのは出入り口だった。無駄に大きな出入り口。しかしそこはバラバラになっていて、人が通ることなんて簡単すぎるくらいの穴があった。


「これって……」
「昼休みのこと、水無月知ってるか」
「……何も」


飯田くん達が疲れていた様子なのはこれが関係しているらしく、オールマイトが教師をやっていることについて、マスコミ連中が取材のためにこの穴から入ってきたそうだ。

それで警報が鳴り、大パニックになって……。


ただ、個性でこの穴が開けられたとしか思えないわけだけど、詳しいこと、例えば犯人だとかはまだ分からないし、何より一生徒にあれこれ漏らすわけにはいかないので、これくらいしか教えてはもらえなかったけど。


それで何故私が呼ばれたか。つまるところ直してほしい、ということだ。


「良いように使うようで悪いが……」
「大丈夫です!私、あまり役に立てることがないので……任せてもらえて嬉しいです!」


早速穴を塞いでいった。バラバラの欠片は次々と収まっていき、やがて、元通り綺麗な壁になる。

久々にこんな大きなものを直したかもしれない。疲れはいつもよりもどっとくるけれど、自分が雄英の助けを出来たことは名誉だと思えた。


「いかがでしょう、こんな感じですかね……」
「ありがとう。僕らも自分達ですればいいんだけどね、1度君の個性を見てみたかったんだ。これは僕のワガママね!」


根津校長先生がにこりと笑う。ハイスペック、という個性をもつらしい校長に見てみたかったと言われるのは、気恥ずかしいというか驚きだ。


「大したものではないですが……」


光栄です、と返したところで予鈴がなった。私達はひとまず戻ることになる。


「水無月君!何だったんだ?先生の用件は」
「えーっと、内緒!……かな?」
「何だって!?」


自分の口で言うものじゃないと思った。本当は話したくてたまらない。だけど自慢話はヒーローらしくない。




「強いて言うなら、ヒーローのお仕事だよ!」


初めての。決して目立つわけではない、ヒーローの仕事。それも私は悪くないと思った。






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