地獄への道は善意で舗装されている。

□USJの惨劇。
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「あれ、誰も居ない」


今はヒーロー基礎学の時間だから、もしかしたらまたどこかで実戦でもしてるのかもしれない。職員室に行って聞いてみたら分かるだろうか。


その時、突然放送がなった。



「緊急事態発生!動ける教員は直ちにUSJに向かってください!繰り返す!動ける教員は直ちにUSJに向かってください!」


いつもなら放送は、短いチャイムを鳴らしてから丁寧にかかるものだ。だけど今回は、いきなりはじまっていきなり終わった。緊急事態というほどだから相当かもしれない。

USJって、どこだろう。まさか大阪の方にあるUSJじゃないだろうし。仮に病み上がりの私が行っても仕方ないんだけど、クラスメイトの皆が巻き込まれていたら……。


「どうしよう、大人しくしてた方が……いいよね……」


廊下に出たり窓から外を眺めたり、とにかく落ち着かなかった。そんなとき、プレゼント・マイク先生が近くを通った。


「A組の……!」
「せ、先生、緊急事態って何でしょうか!私は物を直せます!戦えませんけど役に立ちます!」
「"再生"だな……あー、OK、ついてこいリスナー!」


他の先生だったらダメって言われてただろうな。





玄関を出て少し走ると、いわゆる軽トラックというのだろうか。後ろは荷台となっている、バスのように大きな車が停まっていた。荷台には沢山の先生が乗っていて、その中にはヒーロースーツを着た飯田くんがいた。


「飯田くん!……やっぱり皆だったんだね」
「水無月君!?どうしてここに!」
「私も役に立ちたいから!」


飯田くんは疲れている様子だった。息が切れて、肩で息をしている。


「これで全員か!?出すぞ、掴まってろ!」


急発進した車。重力に負けそうになった。車でなきゃ行けない距離に施設作るな!


「何があったのか詳しく説明してくれるか!?」
「結論から言うと敵が現れました!ワープを使うようです。今は相澤先生と13号先生が応戦してくれています、先程オールマイトも向かいました!」
「あそこにセンサーはないからな、ワープされちゃあどうしようもない!」
「生徒もUSJ内でバラバラに飛ばされました。無事かどうか、今は分かりません……」




USJに着いてからはあっと言う間だった。敵は未だに残っていたけど、スナイプ先生の威嚇射撃や13号先生の決死の行動などによって退避したようだった。

相澤先生が大怪我をして運ばれた。敵の怪物と戦い、腕を負傷したと。もちろん腕だけじゃない。しばらく学校には来れないだろう。

生徒では緑谷くんだけが酷い怪我をした。梅雨ちゃん曰く「敵に攻撃をされたわけじゃないわ。緑谷ちゃんの個性はどうなっているのかしらね」とのこと。


確かに、緑谷くんは個性を制御出来ていない様子だ。少なく見積もっても12年や13年は個性と共に生きてきているはず。個性を使うだけなら息をするように出来る。


かく言う私も、最初は触れなければ直せなかったのが、今では3メートルや4メートルほどなら、離れていても直すことが可能だ。それ以上離れてしまうと、直せないこともないが、再生速度が遅くなっていく。それでも元の形が分からなくても直せるのが、この個性の大きなメリットだろう。


「明日は臨時休校になったわ。でも、"休み"じゃないわよ。"自宅待機"だからね」


相澤先生の代わりにきたミッドナイト先生の言葉に、せっかく休みになったのに、と思った。
しかし、当然と言えば当然のことで。それに皆だって外に出る気は失せるのではないだろうか。


「帰り道はくれぐれも注意するように。あまり1人で行動しないようにね。残りの授業は別日に回すから、今日のところは解散!」


皆があれこれ言いながら教室を出ていく。飯田くんと私も、帰路に着いた。

何かを話す雰囲気ではなかった。何を話したらいいのかも分からない。口火を切ったのは飯田くんだ。


「熱はもう大丈夫なのか?」
「うん!保健室で少し治癒してもらったから。ちょっと頭痛いけど、これくらいは平気!」


私が歪ませてしまった場所は、コンクリートの地面は元通りだった。けれどガードレールはぐにゃぐにゃのままだ。車からも歩行者からも特別障害にはならない程度とは言え、このままなのも申し訳ないので、そっと直しておいた。


「それは、個性が暴走した結果だと聞いた。水無月君は壊れたものを直すだけじゃなかったんだな」
「よっぽどのことがないとできないよ。普段の私じゃ、どれだけ頑張っても成功しない」


もしこれを思う通りに出来たらどうだろう。ただ直すだけの私にも、攻撃の手段が加わるんじゃないだろうか。


「絶対完成させる!雄英に入ったんだもん、立派なヒーローになりたい!」
「その意気だ!俺も素晴らしいヒーローになってみせよう!」
「頑張るぞー!エイエイオー!」
「オォー!」









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